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不動産法律基礎知識 第3回【無効と取消し】

不動産法律基礎知識の第3回目は、宅建試験などの資格試験で論点となる無効と取消しの違いについて説明していきましょう。
不動産仲介など不動産実務の中では、あまり無効と取消しが論点となることはないですが、試験対策としては必須の知識なので、我慢してみていきましょう。

「無効」と「取消し」 どちらも無かったことになるという結論は同じになりますが、厳密に言えば異なることになります。
宅建試験などの試験対策的には、無効と取消しの違いを深く意識する必要はないのですが、無効を主張することができるケース、取消しを主張することができるケースについては、きちんと場合分けをしておかなければなりません。
また、誰が無効や取消しを主張できるのか?についてケースによって異なることをきちんと場合分けしておく必要があります。

無効とは?

始めから無効。無効なものは無効とった感じです。誰から主張されてもされなくても無効は無効だということです。誰からでも無効を主張できることになります。

取消とは?

一方で、取消とは、取消されるまでは有効であり、取消されて初めて「当初に遡って無効」となります。
取消しができる行為を放置しておくと、取消権が時効にかかってしまい、もはや取消しができなくなることがあります。

以上、無効と取消しの違いを整理すると、

無効 取消し
当事者間の効力 初めから無効 取消されるまでは有効。取消されれば当初に遡って無効。
主張権者の制限 誰でもOK 取消権者のみ
取消権の期間制限 無し 追認することができる時から5年

又は

法律行為の時から20年にて時効消滅

追認の可否 不可(新たな法律行為をしたものとみなす)

※第三者との関係は、より複雑なため、別途「善意、悪意、無過失、有過失」のコラムで説明します。

取消しができる人

また、取消しができる人にも制限があり、基本的には、意思表示をした人とその保護者しか取消権が認められていません
意思表示について取消しができる人を民法では次の通り定めています。

(取消権者)民法第120条
1 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

ここで超重要なのは、取消権を有する人は、基本的に意思表示をした側にあり、相手側には取消権がないということです。(よく、資格試験のひっかけ問題で出題されます。)

意思表示について取消しができる人は上記の民法120条の通りですが、民法で定める無権代理については、相手方保護の観点から、無権代理人の相手方にも取消権があるという重要な例外がありますので要注意です。

(無権代理の相手方の取消権)民法第115条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない(※)。

※過失があっても悪意でなければ取消すことができることに注意。ここはよくひっかけ問題で狙われる。

ちなみに、無効と取消しのどちらも主張できるケースにおいては、どちらを主張しても構わないというルールになっています。

以上が無効と取消しの論点でした。
次回は、この無効と取消しに加えて、当事者や第三者間における善意と無過失の問題について考えてみましょう。

不動産法律基礎知識 第4回【善意と無過失】

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