不動産民法

民法改正と不動産業(売買)への影響: 契約不適合責任(導入編)

今回の民法改正は、不動産取引関係の実務を根本的に変質させるものから、従来の裁判所の判例理論を条文化したものまで、様々なレベルのものがあり、何がどれだけの影響力を持つかがイマイチ分かりにくいものになっています。

これから「民法改正と不動産業への影響」を連載方式で説明していきます。

是非、実務の場面で思い出していただけると幸いです。

前回のガイダンスでザックリと全体像を解説しました。今回の民法改正の全体像をつかみたい方は、こちらをご覧ください。

民法改正が不動産業に与える影響

民法改正による不動産業に影響の与え方については、そもそも影響度の大小の違いという側面と、各ジャンルの改正が新設ルールなのか? 根本的改正か否か?という改正内容の深さの程度という側面とを見ていかないと本質がなかなかつかめないようになっています。

この連載では、このことも意識して、重要かつ根本的改正となったものから重点的に解説していきたいと思います。

また、あまりにも論点が深すぎるものについては、導入編と深掘編に分けて解説していきますので、結論から知りたい!という人は導入編を、周辺の人に一目置かれたい人は深掘編を読んでいただけるとかなり自慢できると思います。

また、売買編、賃貸借編、一般編とカテゴリーをわけながら解説を進めていきます。

契約不適合責任とは?

売買編のトップバッターは、最重要かつ根本的改正となった「契約不適合責任」です。

今回取り上げる「契約不適合責任」は従来の「瑕疵担保責任」制度を根本から変えるものであり、不動産業界にとって、今回の民法改正のヤマ場とも言える分野であります。民法改正後は、従来の「隠れたる瑕疵の有無」から「契約の適合性の判断」へと、契約でそもそも何を合意したのか?ということが主眼になります。

「契約不適合責任」をザックリ解説すると「契約内容と異なった場合は、売主に対する請求メニュー(修補請求)が増えた」ということです。その他は本質的に大きく変わりません。

それでは、今回の改正ポイントをザックリと確認してみましょう。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ根本的転換

改正前民法では、売買対象物に「隠れたる瑕疵」があった場合において、売主は「瑕疵担保責任」を負うというという考え方でした。

一方、契約不適合責任においては、契約の通り履行できなかった売主に対する債務不履行の一場面として処理するという考え方に大転換しました。
どのように変わったかを改正前、改正後を一覧にしてまとめると次のようになります。

詳細は、次回以降の深掘編にて取り扱うので、ここでは、結構変わったんだな~程度で十分です。

不動産売買実務への影響は?

今回の法改正は、法解釈がテクニカルに変わったという側面が強いので、実際の実務への影響はさほど大きくないと言えます。

実務家の方は過度に意識する必要がないというのが結論です。

ここで、実務ではさほど変わらないとしたのは、そもそも瑕疵担保責任も契約不適合責任も任意規定であり、特約で排除できます
宅建業法や消費者契約法等に抵触しない範囲であれば、特約で担保責任を負わないという特約は有効であります。

売主が知りながら告げなかった瑕疵については同じく売主に責任追及できるということも変わっていません。

結論を言えば、瑕疵担保責任を負わない旨の条項を入れて売買契約をする場合の実務が、改正民法においては、契約不適合責任排除条項を入れて売買契約をすることもできるため、実務ではさほど影響は少ないと考えます。

資格試験への影響は?

一方、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、不動産鑑定士などの資格試験受験生にとっては、ひっかけ問題が非常に作りやすいものとなっておりますので、やや細やかに整理した方がいいです。

これまで宅建試験などで一生懸命、「瑕疵担保責任」を学習してきた知識はこれで一旦空っぽにして、今回から導入された契約不適合責任に頭を切り替えていく必要があります

という意味では、資格試験受験生の方は、新旧対照に気を取られることなく、新たに契約不適合責任の項目をしっかり学習するというスタンスが重要かと思います。

次回からは、変更箇所を細かく見ていきたいと思います。

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