不動産業 宅地建物取引業

不動産関連プレイヤー【不動産流通】

不動産流通業とは?

一般的に、不動産仲介業は「不動産流通業」と呼ばれております。

不動産流通業は、売買系と賃貸系に大きく分けれ、更に取扱い金額規模、アセットタイプによって業界内の細分化が進んでいる業態と言えます。

「仲介」、「媒介」、「流通」と言葉は異なりますが、意味合いは同じです。

総合不動産会社は、自社で不動産を開発したり、自ら売主となって不動産を売買する機能を有しますが、これらには不動産価格の下落による投資リスクを内包するため、傘下の流通子会社リスクの比較的低い流通分野に力を入れる傾向があります。

不動産流通ビジネスは、不動産業界の中では比較的リスクが低い一方で、報酬額が一定程度確保できることから、不動産業界への新規参入の場合の殆どが流通業からスタートさせるというのが一般的です。

宅地建物取引業法の規制

この不動産仲介業を営むには、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)の免許を受けなければなりません。

宅建業法による規制のうち媒介(仲介)の規制に焦点を当てて解説いたします。

媒介(仲介)手数料の制限

売買仲介の場合

仲介業者は、物件金額に対して以下の報酬額を上限として依頼者の一方から受領することができます。

一般的に不動産は400万円を超える売買価格となることが一般的ですので、「物件価格の3%+6万円(※)」が報酬の上限額となります。

※6万円が加算される根拠は、200万円以下の部分、400万円以下の部分を次の計算式で報酬計算されるためです。200万円×(5%-3%)+(400万円―200万円)×(4%-3%)=6万円

なお具合的な報酬額の計算については、以下の点に注意が必要です。

・物件価格とは、消費税を含まない金額となる
 つまり建物消費税額を控除した消費税抜きの売買価格で計算しなければならない。
・仲介業者が消費税課税業者の場合、上記に消費税を加算された額が実際の支払い額となる。

売買の場合、「依頼者の一方につき」上記の媒介手数料が上限とされるため、売主側、買主側仲介が同一の会社であった場合(両手取引)においては、倍の報酬額が上限となります。

※その他交換もありますが、取引として稀なので省略します。

賃貸仲介の場合

売買の場合と異なり、仲介業者が受け取ることの上限は、「双方から賃料の1か月分」となっています。

このように売買と違って、宅建業法の規制により、報酬額が低く抑えられていることから賃貸仲介の場合はAD(広告宣伝費)をオーナーから収受して、営業活動を行うのが慣行となっています。

相場的に言えば、当該ADは1か月程度ですが、物件によっては客付けが難しい案件もあり、当該ADを数カ月支払うケースもたまにあります。

※国土交通省の告示を細かく見ると「居住用の場合は、依頼者の承諾を得たときを除き、依頼者一方から0.5か月が上限」となっています。ただし、依頼者が承諾する(させる?)ことが通常となり、1カ月の仲介手数料を収受するのが一般的と言えます。

不動産流通業界の全体像

不動産流通会社を売買系、賃貸系の軸、法人(プロ)系、個人(アマ)系の軸に分類すると概ね以下のような業界マッピングになります。

これ以外に、土地系、建物系の分類、規模感による分類をすると更に細分化されることになります。

以下、それぞれの業界特性に言及します。

売買系 不動産仲介会社

売買系 法人(プロ系)

売買系、かつ、プロ系の不動産仲介会社は、信託銀行の不動産部を筆頭に、日系大手不動産会社の法人仲介部門、外資系のプロ向け流通会社に大きく分類することができます。

特に、私募ファンドやREITなどの対象物件は数十億円規模の物件が殆どであり、これらは、信託銀行の不動産部門が情報を独占している傾向が強いです。

全般的な特徴
・信託銀行は取扱い金額が大きいもの(例:10億円以上)を信託銀行本体で、それ以外系列の不動産販売会社にて取扱うケースが多い。
・日系大手不動産会社の仲介は上記図のように法人部門と個人部門が分かれている傾向があり。
・外資系の仲介会社は、後述のオフィス仲介部門との相乗効果でプロ向けの売買情報をいち早くキャッチする会社も多い。
売買系(プロ)不動産仲介会社の具体例
信託銀行
・三井住友信託銀行 ・みずほ信託銀行 ・三菱UFJ信託銀行 ・SMBC信託銀行 ・りそな銀行
大手仲介
・三井不動産リアルティ ・三菱地所リアルエステートサービス ・住友不動産販売 ・野村不動産アーバンネット ・東京建物不動産販売 ・東急リバブル
外資系
・CBRE ・JLL ・サビルス ・クッシュマン ・コリアーズ

売買系 個人(アマ系)

エンドユーザーである個人向けに売買仲介を行っている会社の取扱いの殆どは住宅物件です。

住宅物件には、新築、中古マンションの別、マンション、戸建の別がありますが、以下、マンションを念頭に説明します。

全般的な傾向
・新築分譲マンションの場合は、大手デベロッパーの傘下の不動産販売会社が販売代理を受託するケースが殆ど
・信託銀行系列の不動産販売会社は、系列銀行のネットワークがあり相当の存在感あり
・中古マンションの場合は、分譲デべ系列が管理しているケースが多く、二次流通も一定程度、系列に流れる傾向あり
・中古マンションの他に個人のセミプロ向けの収益物件を得意としている会社も多い
・中小不動産流通会社には、大手フランチャイズの傘下に加盟している店舗も多い
売買系(アマ)不動産仲介会社の具体例
信託銀行系
・三井住友トラスト不動産販売 ・みずほ不動産販売 ・三菱UFJ不動産販売
大手仲介系
プロ向けとほぼ同じであるが、以下のようなアマ系に強い流通会社あり
・大京穴吹不動産 ・住友林業ホームサービス ・大成有楽不動産販売
フランチャイズ系(※)
・センチュリー21 ・ピタットハウス ・LIXIL不動産

※フランチャイズ系は、経営母体そのものは地場の不動産会社であるケースが殆どであり、売買、賃貸両方をバランスよく経営している会社が多い。

賃貸系 不動産仲介会社

一般的な傾向として、売買は上述の通り取扱い規模も大きいことから寡占化が一定程度進んでいますが、賃貸系の不動産会社は、オフィス系を除いて小資本の地場会社による経営が比較的多い傾向があります。

賃貸系 法人(プロ系)

賃貸系、かつ、プロ系の不動産仲介会社はアセットタイプによる細分化大きな特徴と言えます。

すなわち、事務所専門、商業専門、物流その他専門とアセットタイプによる専業化が進んだ業界と言えます。

全般的な傾向
事務所仲介では、CBRE、三鬼商事、三幸エステートなど超大手が存在し、その他中小系が混在している
・店舗系には、地場の老舗系の仲介会社が多い。
・物流は専門性が強すぎるため、大手の仲介と言えども参入障壁が高い。

賃貸系 個人(アマ系)

賃貸系、かつ、アマ系の不動産仲介会社の殆どが住宅賃貸仲介のため、駅前に店舗を構える仲介会社が多いというが大きな特徴と言えます。

全般的な傾向
・大手不動産会社は殆どこの分野に参入例がない。
・表面上、大手に見える会社も実際はフランチャイズの小資本の会社が経営するものが多い。
・他の仲介分野と比較して、1件当たりの取扱い金額が最も低いため、件数の回転が事業者にとって重要な要素となる。

その他不動産流通関係における論点

信託受益権の取引

証券化スキーム(※)における大型の不動産投資においては、不動産売買に関わる流通税(不動産取得税、登録免許税)を圧縮する必要性から、現物不動産を信託受益権化して売買を行うことが主流となっています。

この信託受益権は金融商品取引法上の「みなし有価証券」となることから、この信託受益権の売買を仲介する際には、媒介業者側に第二種金融商品取引業の登録が必要とされます。

一般的に不動産会社やファンド、REITなどのプロを相手とする大手仲介会社は、この登録を受けているのが一般的です。
(許認可上は「登録」ですが、業界的には「二種免許」と呼ばれています。)

※不動産投資ファンド(私募)、不動産投資信託(上場REIT、私募REIT)のこと。信託スキーム、流通税については、証券化スキームの項で別途詳細説明します。

第三者の為にする契約

従前、不動産会社の転売スキームとして重宝されていた「中間省略登記」と言う方式がありました。

これは、所有権をA⇒B⇒Cと瞬間的に移転する際、間のBへの移転を省略してA⇒Cへ不動産の所有権移転登記を直接行うものとして認められてきました。間のBは不動産仲介業者のうち転売業者となるケースが多かったスキームです。

この「中間省略登記」は、2004年の不動産登記法の改正により、権利変動を正確に記録する必要があるとされ、利用できなくなりました

これに取って変わるスキームとして民法に定める「第三者の為にする契約」が実務上、新中間省略登記として活用されています。

概要としては、次の通りです。

ステップ① 
不動産所有者A(売主)と第一買主B(多くは仲介業者)の間で第三者の為の契約を締結。

ステップ② 
実際の買主である第三者Cが第一買主Bに対して受益の意思表示。つまり購入の意思表示を行う。

ステップ③ 
C⇒B⇒Aと代金を支払うことにより、所有権をAからCに直接移転する。

以上のようなステップを踏めば、所有権移転登記を事実上省略することができ旧来の中間省略登記と同じ効果が得られます。

この結果、不動産の所有権移転に関わる不動産取得税、登録免許税の税コストを最終購入者が直接負担するスキームとなります。

仲介会社が、転売益を獲得したいと考えた場合に活用されるケースであり、この第三者の為にする契約を専業に行っている不動産流通会社も多いです。

略称として三為(さんため)業者と呼ばれています。

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