不動産就活

不動産業のヒューマンスキルと専門スキル

一般的な人材の能力

不動産業界に限らず、企業からみた人材の価値はヒューマンスキルと専門スキルの掛け算となります。

このヒューマンスキルには、対人コミュニケーション能力、ロジック力などが挙げられ、IQやEQが高いというのは結局のところヒューマンスキルと言えます。
日本では、「地頭がいい」と言ってこれらのヒューマンスキルを総合的に表現することもありますね。

一方で専門スキルとは、ヒューマンスキル以外の現場の実務に使える能力であり、その人の実務経験に基づき蓄積されていく業務遂行能力と言えます。
この専門スキルは、一般的に新卒の就職後の職業キャリアにて蓄積していくという特徴がありますね。

新卒採用の場合は、専門スキルが殆どゼロの状況なので、企業側からみればヒューマンスキルとして「この人はわが社で成長しそうだ」という感覚が重視される傾向があります。
新卒市場がポテンシャル採用と言われる所以です。

このように考えると、中途市場の特徴としては、ヒューマンスキルに専門スキルが掛け算された形でその人の能力が評価対象となり、年齢・経験を積み重ねるほど、実務経験が重視されることになります。

以上の内容を整理すると次のようになります。

ヒューマンスキルに分類される能力

学力、対人コミュニケーション能力、ロジック力、記憶力

専門スキルに分類される能力

資格、実務経験、実務遂行能力、語学力など

不動産業界に特有の人材能力

ヒューマンスキルはどの業界、どの職種でも重要なのは言うまでもありません。

当然ながら、ヒューマンスキルと専門スキルの掛け算で高いスコアを表出できる人の年収が高くなる傾向があります。

ただし、ヒューマンスキルと専門スキルを相対的に評価すると、重視されるウェイトは不動産業界の中でも変わってくるというのが現実です。

ヒューマンスキルと専門スキルに分解して、不動産業界の各分野で求められるスキル(ペルソナ)を見ていきましょう。

※以下、述べるスキルはあくまで一般論です。各企業により採用方針が異なります。

デベロッパー特有のペルソナ

デベロッパー(一棟)

一棟開発型の不動産開発事業の推進担当者には、ヒューマンスキルと専門スキルがバランスよく発揮できることが求められる傾向にあります。
プロジェクトの全体統括能力、アレンジメントスキルに加えて、売却先である顧客がプロのため相応の専門スキルも要求されます。

またデベロッパーと一口に言っても、取り扱うアセットがオフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設と多様なので、各アセットに応じた不動産関連知識が必要となります。

特に、商業施設やホテルなどのいわゆるオペレーショナルアセットの開発担当者には、モノの知識だけでなく運営の知識も一定程度必要とされるので専門スキルの面が多様であるという傾向があります。

重視されるヒューマンスキル

・プロジェクトの全体統括能力
・アレンジメント能力
・都市、街づくりに対する感性

重視される専門スキル

・不動産開発に関する知識全般
・開発するアセットに対する専門的知識
・投資ファンド等の集団投資スキームに関する一定程度の知識

デベロッパー(住宅分譲)

住宅分譲型の不動産開発事業の推進担当者には、ヒューマンスキルと専門スキルがバランスが重要ですが、ヒューマンスキルがやや重視される傾向にあります。
プロジェクトの全体統括能力、アレンジメントスキルに加えて、売却先である顧客がプロのため相応の専門スキルも要求されます。

住宅デべの担当者としては、高いモチベーションを維持するためには、最新の住宅に関する潮流やインテリアなどに対する造詣を深めておくというアンテナの高さも要求されます。

つまり「快適で高品質な住まい」を常に意識する思考が必要となります。

重視されるヒューマンスキル

・プロジェクトの全体統括能力
・アレンジメント能力
・インテリアデザインなどの消費者的感性

重視される専門スキル

・不動産開発に関する知識全般
・住宅建設・開発に対する専門的知識
・宅建業法や品確法などの消費者保護法制の運用知識

不動産流通 特有のペルソナ

不動産流通 プロ向け売買系

「不動産は人に付く」との業界格言がある通り、不動産流通全般に言えることとしては、全般的にヒューマンスキルの高さが要求される傾向にあります。
人付き合いが苦手な人には向かない業態と言えましょう。

不動産仲介分野の中でも法人向けの売買仲介担当者には、このヒューマンスキルに加えて、取引相手がデベロッパーや投資法人・私募ファンドのAM会社などのプロとなることから、一定程度のプロとの会話が成立する知識が必要となります。

ただ、実務の現場感覚としては、専門スキルよりヒューマンスキルが重視される傾向があります。
嫌な感じのエージェントからは誰もモノを買いたくないですよね。

重視されるヒューマンスキル

・高度なコミュニケーション能力
・契約アレンジメント能力
・契約条件を引き出す交渉力

重視される専門スキル

・不動産取引に関する知識全般
・取り扱うアセットに対する一定程度の専門的知識
・宅建業法や金商法、投信法などの一定程度の知識

不動産流通 アマ向け売買系

ここで言うアマとは、主に個人を指し実需であれ投資であれ購入の意思決定が個人によりなされる売買に当たっての仲介を念頭に説明していきます。
主に、戸建て、マンションなどの住宅系のアセットを専門に取り扱うことが多いと思います。

アマ系売買の特徴としてはネットで集客した顧客を如何にクロージングに持ち込んでいくかということが勝負となり、情報入手当初としては、プロ向けよりヒューマンスキルが発現されることが少ない傾向にあります。

ただ、顧客と面談後においては相当高いヒューマンスキルが要求され、最低限として清潔さや誠実さが求められるのは言うまでもないでしょう。
一般に消費者サイドから見れば、不動産屋は「口八丁手八丁の人々」と思われてる傾向があり、ヒューマンスキルが低い人々というのが世間一般の見方とも言えます。

一方で、専門知識は住宅取引に関する知識であり、端的にいえば重要事項説明書を一人で書き上げる能力とも言えましょう。

重視されるヒューマンスキル

・誠実さ、清潔さ
・対人コミュニケーション能力
・フットワークの軽さ、行動力

重視される専門スキル

・住宅取引に関する知識全般
・宅地建物取引業、品確法などの住宅関連法制知識
・重要事項説明のための不動産調査能力

不動産流通 プロ向け賃貸系

プロ向け賃貸仲介業者としては、取り扱うものが事業用の不動産により分業化が進んでいる傾向ああり、取扱いアセットに対する深い賃貸借に関する知識が必要とされます。

ヒューマンスキルとしては、プロ向け売買エージェントとほぼ同じ傾向と考えられますが、クロージング能力より調整力が優先される傾向となります。

専門スキルとしては、借地借家法の借家に関する専門的知識が必要とされます。特に、昨今は普通借家だけでなく定期借家が相当浸透してきており、高い契約実務能力が求められっる傾向にあります。

重視されるヒューマンスキル

・高度なコミュニケーション能力
・契約アレンジメント能力
・契約条件を調整する交渉力

重視される専門スキル

・不動産賃貸借に関する知識全般
・取り扱うアセットに対する一定程度の専門的知識
・民法、借地借家法、宅建業法などの詳細な法務知識

不動産流通 アマ向け賃貸系

アマ向け賃貸仲介業者としては、取り扱うものの殆どが住宅となり専門的知識よりヒューマンスキルが重視される傾向にあります。

宅地建物取引士の資格を有さない担当者も比較的多く、他業態からの転職が多いのも一つの特徴と言えます。

重視されるヒューマンスキル

・誠実さ、清潔さ
・対人コミュニケーション能力
・フットワークの軽さ、行動力

重視される専門スキル

・住宅賃貸に関する一般的知識
・取扱い地域の不動産賃貸情報に関する知識

不動産アセットマネジメント(AM) 特有のペルソナ

不動産AM 物件ソーシング業務

AM会社における物件ソーシング業務とは、買主又は買主代理人としての不動産取得業務全般を指します。
なお、デベロッパーの用地取得業務も物件ソーシング業務と言え、同様のペルソナが要求されることになります。

不動産流通の売買プロ系で述べた通り「不動産は人に付く」ものであり、不動産流通業者からの情報が主な情報源となり、不動産流通業者との人的付き合いが非常に重要なファクターとなります。

AM会社のソーシング担当者は、不動産流通業界からの転職組も多い傾向にあります。

正に、不動産流通業界とのコインの裏表の関係にあると言え、ヒューマンスキルは売買の流通業者と同様と言えましょう。

不動産AMのソーシング担当者には、物件取得に関するデューデリジェンス(DD)業務までを担当することが一般的であり、流通業者より深い不動産専門知識が要求される傾向があると言えます。

重視されるヒューマンスキル

・高度なコミュニケーション能力
・契約アレンジメント能力
・契約条件を引き出す交渉力

重視される専門スキル

・取得アセットに対する深い専門的知識
・不動産マーケット分析能力
・物的、法的デューデリジェンス能力
・契約実務、ドキュメンテーション能力(※)

※デベの用地取得に関しては、ドキュメンテーション能力はあまり重視されない傾向にあります。

不動産AM アセットマネジメント業務

物件取得担当者からモノの運用を引き継いだ後に、アセットマネジメント開始されます。

このアセットマネージャーは、正に投資法人や私募ファンドの投資家の代理人としての不動産経営に関する全般的業務を担うことになり、高度な不動産運用に関する専門的知識が必要とされます。

モノの運用面だけでなく、資金調達サイドの実務経験も必要となり、不動産業界の中では最も高次の専門的知識が要求されると言っても過言ではありません

誤解を恐れずに言えば、ヒューマンスキルより専門的能力が重視される傾向にあると言えます。

この専門的知識には一定の汎用性が認められ、同業を数年で渡り歩く猛者も多くいます。

重視されるヒューマンスキル

・口頭によるロジカルな説明能力
・書類によるレポーティング能力

重視される専門スキル

・不動産・金融に関する深い知識
・取り扱うアセットに対する専門的知識
・投資ストラクチャーの構築、運用能力

このように同じ会社の中でも、全く異なった特徴を持った部署が併存しているのがAM業界の特徴と言えます。

不動産プロパティマネジメント(PM) 特有のペルソナ

リーシングマネジメント業務(LM業務)

PM会社におけるリーシングマネージメントは、投資家代理人として不動産収益(NOI)を最大化するミッションを背負っていることから、賃貸系の流通事業者に求められる能力に加えて、マネジメント能力が要求される傾向があります。

更に、LM業務を担う担当者が一般的には、AM会社の窓口担当者となる傾向もあり、社内外のコミュニケーションを円滑に推進する対人能力も必要とされます。

重視されるヒューマンスキル

・高度なコミュニケーション能力
・契約マネジメント能力
・口頭、書面によるレポーティング能力

重視される専門スキル

・不動産賃貸借に関する知識全般
・取り扱うアセットに対する専門的知識
・民法、借地借家法などの賃貸借に関する詳細な法務知識

ビルメンテナンス(BM)業務

ビルメンテナンス業界は、ハードを主に取り扱う業務が主となり、営業的な対人スキルより、日常的な保守運営を実行する誠実さが求められる傾向にあります。
当然ながら、ビルメンテンナンスに関する専門的知識も必要となりますが、ビルメンテナンスの領域は多岐にわたるため更に専門業者に外注されるケースも多く見受けられます。

ビルメンテナンス業界は全般的に人手不足の業界であり、中途採用でも比較的若手の未経験者を採用し育てていくという会社が比較的多いのではないでしょうか。

※PM会社内のビルメンテナンス部門を念頭に置いて説明しておりますが、ビルメンテナンス業界の人材マーケット、ペルソナも同様と考えます。

重視されるヒューマンスキル

・誠実な業務運営能力
・几帳面な管理・整理能力
・書面によるレポーティング能力

重視される専門スキル

・建築設備に関する専門的知識
・法定点検等の制度理解
・取扱い設備によっては専門資格が必要

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