不動産鑑定

ホテルの所有・経営・運営について

ホテルの所有・経営・運営に関する一般的状況

旧来、バブル期以前において日本においてホテルの所有と経営は一体化しており、不動産所有者自らがホテルの経営・運営に携わるのが一般的でした。

その後2000年代に入り、日系の不動産会社の破綻等を機に参入してきた米国系の不動産投資ファンドを中心として、米国型のホテル運営モデルを導入する事例が日本のホテルマーケットにも浸透していきました。更にその後、日本においてもホテル専業のJREITや私募ファンドが登場するに至り、ホテル投資マーケットを中心に所有、経営、運営の分離が進んでいきました

各プレーヤーの機能

ホテルの所有・経営・運営に携わる各プレイヤーの状況を見ていくことにしましょう。

ホテルの所有

文字通り、不動産所有者であり、オーナー業、大家業とも呼ばれる。日本における旧来型のホテルオーナーは、以下に述べるホテルの経営、運営を内在化させた一体型経営が一般的であったが、昨今は、不動産投資信託や不動産投資ファンドの台頭により、不動産を所有し、不動産から得られる収益を享受するハコとしての位置づけとなっているケースが増加している。

ホテルの経営

所謂アセットマネジメント(AM)であり、ホテル投資においては、日常のホテルの運営収支だけでなく、収支上GOP以下の項目である不動産関連経費を考慮した不動産投資経営全般のCFが守備範囲となる。投資期間における不動産所有者の利益の最大化を図ることが目的のため、保有期間のCFだけでなく、売却シナリオまでのマネジメントを行うこととなり、ベンチマークは投資期間中の総IRRとなるのが一般的。

ホテルの運営

ホテルの運営収支を向上させることが主な役割であり、守備範囲としてはホテル部門の事業収支であるGOPとなるのが一般的。不動産も所有せず、一般的にはホテル運営必要なベッドやカーペットどの什器備品の更新費用も負担しない。ホテルの日常的運営にかかわるソフト面を専門的に取り扱い、ホテル経営者又は所有者から業務委託報酬を受け取るビジネスモデルである。

ホテルの運営形態

ホテルの運営形態は、大きく4つに分かれると言われており。それぞれの特徴を整理すると以下の通りとなります。

所有経営一体型

旧来、日本において多く見られたモデルであり、上記の所有、経営、運営の全ての機能が内包されているモデル。不動産オーナーが自社のブランドで行う直営モデル。

賃貸借契約型

不動産所有者が不動産一棟を、ホテル経営を専門とする会社に賃貸し賃料を受け取るモデル。固定賃料型と固定+変動賃料型、最低保証賃料型など様々な形態に分化される。

MC型

運営委託型(Management Contract)とも称され、不動産の運営能力を持たない不動産オーナーが収益(主にGOP)の最大化を図るべく、ホテルの運営のプロフェッショナルである運営業者に委託するもの。

FC型

フランチャザーがフランチャイジーにブランドを提供し、当該ブランドのもとでホテル経営者(又は運営者)がホテル事業を行うモデル。

ホテルの運営形態としては、大きく以上のような4形態に分類されますが、賃貸借契約型とMC型をミックスしたモデル、賃貸借型又はMC型とFC型をミックスしたモデルなど個別のホテルによって採用形態が異なることに留意が必要となります。

具体的な守備範囲

以上のような4つの事業モデルについて、一般的な所有・経営・運営サイドの守備範囲を具体的な項目で整理すると次のようになります。

出典:徳江順一郎著「ホテルと旅館の事業展開」より「宿泊事業の所有・経営・運営」から弊社加工

上記の図の整理はあくまで一般的なホテルの所有・経営・運営モデルの整理ですので、従業員の帰属、指揮命令系統、什器備品の帰属などはオーナーである不動産所有者と経営サイド(通常は賃借人)、運営事業者(通常は賃借人兼オペレーター)の協議により決定していくことになります。

まず以上のような所有・経営・運営の違いを明確にした上で、ホテルの所有者に帰属するキャッシュフローを査定することがホテルの鑑定評価におけるキモと言えます。

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