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人口と地価の相関関係について考える

全国 人口変動と地価変動の相関関係

人が増えれば、土地を使う人も増える。当たり前ですね。
土地が一般の財と異なるのは、供給量に上限があるということです。特に日本は、国土に占める森林の割合が圧倒的に多く、人が居住できる面積である可住地面積は国土の27%程度と言われています。

このように供給に上限があり希少な財であることから、日本では戦後の急激な人口増加に伴い、地価が上昇トレンドを描いてきました。
特に昭和40年代、50年代、その後のバブル経済発生時においては、昭和40年代のオイルショックの一時期的な暴落を除き、バブル経済のピークとなる昭和60年代から平成初頭にかけて地価が急激に上昇してきました。

しかしながら、日本の総人口は2008年の約1億2,800万人をピークに減少に向かうことになります。
直近2023年10月1日時点における日本の総人口はピークより約400万人減少して、約1億2,400万人となっています。

今後、人口減少は加速度的に進むと予測されており、2050年代には、1億人を割り込むことが予想されています。ピーク時から約3,000万人以上の人口が減少し、人口の約25%が消失するという極めて厳しい社会が予想されています。

ここでは、次のデータを掛け合わせて、人口と地価水準について大きなトレンドを見ていきたいと思います。

2020年までの人口データ:総務省統計局「令和5年10月日現在 全国総人口」
2025年以降の人口推計データ:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
2023年までの地価公示データ:国土交通省「地価公示」の過去データ

地価変動はその時々の経済状況に大きく左右されるため人口データより変動の幅が大きい(ボラティリティが高い)ため、長期トレンドを把握するために、Excelの対数近似を用いて、補助線を入れてみました。

人口のトレンドと地価のトレンドが恐ろしいほど近似するということが一目瞭然となります。

今後、日本全国で見れば、急激な人口減少社会が予測されていることから、地価も総じて下落トレンドを描かざるを得ないと考えます。

都道府県別 人口変動と地価変動の相関関係

以上のデータはあくまで全国平均であったことから、地域性を反映していないデータとなります。
次に、都道府県別に同様の分析を行ってみたいと思います。

47都道府県について、全部データを並べるとわかりにくいので、ここでは、次のようにデータを加工して人口推移と地価変動を並べて比べてみることにしましょう。

人口データとしては、
①人口のピークであった2008年と現在時点である2023年時点の比較(増減率)
②人口のピークであった2008年と将来時点の推計値である2050年時点の比較(増減率)

地価データとしては、
③直近2023年の地価公示の住宅地の変動率
④2009年~2023年の地価公示の住宅地の変動率の平均

以下のデータを都道府県別に並べたものが次の通りとなります。

これでは単なる数字の羅列になってしまうので、達観で把握できるように採用データを組み合わせてグラフ化したものが次の通りとなります。

データ1 人口変動と地価変動

上記の①と③を掛け合わせたものであり、直近の「点」としての情報を示したものです。

このグラフを見ても、直近ベースでも地価変動率とここ数年の人口変動率に強い相関関係があることが見て取れます。

データ2 人口予測と地価変動

上記の②と④を掛け合わせたものであり、より長期のトレンドを「線」として示したものです。

殆ど、上記の「点」として切り取ったデータと類似しますが、より一層、近似しているのが達観で把握できます。

地価というものは、長期の人々の期待が織り込まれて形成されるということからも、長期的なデータを平準化してみるとより一層、人口と地価が一定の期待に収斂していくことが分かります。

以上のように、都道府県レベルで見ても、人口と地価は相当な相関性を持っていることがわかります。

今後の不動産投資に当たっては、今後の人口トレンドを見極めることが極めて重要だと言えます。

データの特徴についてのコメント

地価公示は、原則毎年の1月1日の「時価」を全国の不動産鑑定士が鑑定評価基準に基づいて算出するものであります。取引事例比較法や収益還元法を用いて精緻に行われていますが、やはり、首都圏特に東京エリアの地価公示価格は保守的に算出される傾向があり、一方で、地方圏の人口減少エリアでは、固定資産座英等の課税などの政策的要請から、やや高めに算出される傾向があるものと考えます。

例えば、このデータで言うと、東京エリアは人口と地価変動がやや乖離があるように見られますが、実際の地価変動率はもう少し高めになっている可能性も否定できません。

一方で、東京都を含む首都圏については、人口増減の影響を地価がまだ織り込めていないとの解釈も成り立ちそうです。
(半面、宮城県などは、今後の人口減少のインパクトを織り込めていないとの解釈も成り立ちそうです。)

地価は人口動態より振れ幅が大きくなる傾向もあり、今後は人口動態が強い地域は地価はより強い、弱い地域はより弱く二極化していくものと考えます。

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