不動産コラム 不動産投資

最重要投資指標 IRR計算の基本

不動産投資に関する投資指標(利回り)については、GROSSとNET、償却前と償却後、税前と税後、レバレッジ後とレバレッジ前、NOIとNCF、そしてIRRがあることを次の記事で解説いたしました。

不動産の投資指標について

今回は、最重要指標であるIRRについてEXCELを用いた具体的な計算方法を解説します。

不動産投資ファンドのAM業に従事する人でもEXCELがテンプレート化されており、IRRの計算構造を理解している人は、私の感覚では半分もいないとの実感があります。

不動産と金融が融合する中で、不動産業に従事する人もこのIRR思考は非常に重要なので、概念のみならず、具体的な計算方法をマスターして、EXCELでシュミレーションするクセを付けていただきたいと思います。

IRRについて計算例を用いて解説していきますので、なんとなく知っているという人も是非今回の解説で深く理解していただけますと幸いです。

IRRの定義

まずは、IRRの定義から見てみましょう。

IRR(Internal Rate of return)
投資期間中のIncome Gain(Loss)と物件を再度売却した場合のCapital Gain(Loss)を総合した最終結果としての利回り

不動産で言えば、次の3つのステップを総合した利回りとなります。
例えば、不動産を投資して5年後に売却するというCFにて説明すると次のようになります。

不動産投資のIRR
ステップ1:不動産購入。当初投資金額は支出なのでマイナスのCFとなる(0期)
ステップ2:保有期間中のリターンNOI(又はNCF)を各期に落とし込む(1期~5期)
ステップ3:保有期間中の最後に物件を売却し、売却価格はプラスのCFとなる(5期)

このように、IRRの特徴として、投資期間という時間の概念が加味されることが大きな特徴と言えます。

以上のステップ1~ステップ3が不動産投資のIRR計算の基本構成要素となります。

IRR計算の具体例

計算の具体例を示すと次のようになります。

ステップ1:物件購入
・不動産保有会社が1300で不動産を購入
・当該物件の購入当時のCFは賃料収入100に対して経費が30となり、NOIは70となっていた。
・購入時のNOI利回りは5.38%
ステップ2:保有期間中
・賃料値上げや空室率改善に成功し、賃料収入は毎期+2ずつ上昇。
・2年目から、コストを▲2として28まで抑えることに成功
・資本的支出については、その都度発生したものを計上
ステップ3:物件売却
・5年目末に、物件の売却活動を行い無事に1,400の価格で新所有者に対して売却が成功。

この事例のCFをEXCELに落とし込むと次のようになります。

EXCEL作成上の各ステップにおけるポイントとしては、次の通りです。

ステップ1:物件購入時のポイント
・当初の投資は0期とする
 EXCELにおけるIRR計算は毎期の末にCFが発生すると見做されるので、0期の末はつまり1期の始めに該当するため物件購入時点は0期とします。

・当初の投資は、マイナス勘定で建てる。
IRR計算は単純で支払いはマイナス、収入はプラスとして計算すると自動的に計算されるため、当初の投資金額は支払いに当たるためマイナス勘定で計上します。

ステップ2:保有期間中のポイント
・毎期の収入(INCOME GAIN)を計上すること。
ここでは、NOIから大規模修繕費を控除したNCFにて毎期のCFを査定しています。
 
・投資勘定とは別建てで行を設定すること
上記の投資勘定とは別の行にて計算しておくと後ほどの操作がやりやすい。
ステップ3:物件売却時のポイント
 ・投資勘定と同じ行にて計算する
ステップ1で0期にてマイナス勘定を建てた同じ行に物件売却価格を入力

※当然ながら、総CFになるので、これ以外に物件売買に関わる不動産取得税、登録免許税、仲介手数料等の諸経費を控除するのが正しい査定方法ですが、議論を簡素化するため、これらは捨象しています。

EXCELでのIRR関数

以上のCFをEXCELに落とし込めれば、IRR計算は瞬時にできます。

【準備1:CF表の作成】

物件購入⇒保有⇒物件売却までの総CFを1行にまとめ上げます。
以下の表では、NCFと投資勘定の足し算が総CFとなっています。

次のような総CF表をEXCELで作成してください。
前提条件は上記の設例の通りです。

※EXXCEL作成上の注意点
上記の年表示は、「1年目」となっておりますが、数式上は「1」としてください。
上記の例では、「セルの書式設定」⇒「表示形式」⇒「ユーザー定義」⇒「#,##0"年目"」と表示をしています。
以下、数値を入力する際は、必ず「数値のみ」を入力して、表示形式を選択するようにしてください。

【準備2:IRR関数の挿入】

少し詳しく図を用いて説明します。

以下の①~④までの手順をきちんと順番通りに行い、好きなセルにIRR関数を挿入します。

【準備3:IRR関数の範囲の選択】

次に、IRR計算をしたいセルの範囲を選択します。

以下の①~③のステップを順次行えばIRR計算が完了です。

以上のステップを行うだけで、総CFのIRRが計算できます。

この事例では、IRRは6.49%と計算されました。

このように優秀なEXCEL君は、IRR計算を瞬時に行ってくれますので、是非自作してみてください。

EXCELのIRR計算の注意点を掲げておきます。

・毎期定期に発生するCFを前提としている。
・1マスが1年となる年計算である。

これらを解決するために、EXCELでは、XIRRという関数もあります

例えば、月次のCFにおけるIRRを計算したい場合においては、XIRRが威力を発揮しますが、ここでは議論がごちゃごちゃになるので詳しく触れません。
興味ある人は、XIRRでググってみてください。

ローン計算を含めたエクイティIRRについては、こちらを参照してください。

不動産投資指標 IRR計算の応用(エクイティIRR)

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