書籍タイトル 不動産再開発の法務〔第2版〕――都市再開発・マンション建替え・工場跡地開発の紛争予防
書評
大手不動産会社を多数顧問先に抱える牛島総合法律事務所の井上治弁護士による「不動産再開発の法務」
弁護士の書いた本の中でも、不動産実務の観点から書かれている稀有な書籍。
不動産再開発プロジェクトの推進に当たっての実務の進め方のマニュアル本と言えます。
デべの開発部門の担当者必携の本。
不動産再開発部門は、デベロッパーの花形部門であり、正に「街づくり」部隊と言えます。
「不動産再開発プロジェクト」という綺麗には洗練された響きがあります。
しかし、実際の実務の現場においては、利害関係が錯綜する地権者との権利調整や隣地・周辺住民との紛争などの解決など泥臭い仕事が殆どです。
これらの法的解決は弁護士に相談することが多いでしょうが、弁護士にそもそも何を依頼するのか?ということが分かっていない担当者が意外に多くいます。
論点のイロハが分かっていないまま、弁護士と打ち合わせをしても何も意味がないのです。
折角、不動産デベロッパーの花形部門に配属されたのでしたら、この本を何往復読み込むぐらいの気概が欲しいです。
厳しい言い方をさせてもらうと本書のような良書が会社の本棚に眠っているようではダメだと思います。
担当者であれば、本書のような専門書を読みこなしてプロジェクト推進すべきですし、全体像及び細かな論点についても把握しておく必要があると考えます。
少し、ヒートアップして説教じみたトーンになってしまいましたので、本書の紹介をしたいと思います。
本書を推薦本で挙げる理由は次の通りです。
・マンションの建替えの論点も盛り込んでいるため、複合開発部門以外の担当者でも十分に読む意義があること。
・何よりも、再開発関する法務の論点を網羅していること。
・そして、法務だけでなく実務における各種調査のマニュアル本としても十分に活用できるコンテンツとなっていること。
この本を読む前提知識としては、基礎的な不動産法務である民法、借地借家法の一定の理解が必要です。
ただ、宅建の試験に合格した人であれば十分に論点は把握できるはずですので、デべの若手担当者には背伸びしてでも読んでほしい本です。
価格は6600円と一見高く見えますが、内容の深さを考えると激安だと思います。
私の手元にある本は、2017年1月発行の第1刷ですが、2019年に発行された第2冊では改正民法に対応していることのことです。
第1編 開発地・建物に関する事前調査
第2編 用地取得(売買、賃貸借)に関する契約事項
第3編 開発地・建物の賃借人との明渡紛争
第4編 マンション建替え・敷地売却手続き
第5編 再開発の事業手法(容積率の緩和、区画整理、市街地再開発事業)
第6編 再開発建物の建築紛争リスク
第7編 隣地所有者・住民との紛争リスク
こんな人におススメ
・デべロッパーの用地取得担当者
・不動産法務を掘り下げたい人
書籍データ
出版社 商事法務
著者 牛島総合法律事務所 弁護士 井上治