書籍タイトル 事故物件サイト・大島てるの絶対に借りてはいけない物件
書評
事故物件、告知義務、心理的瑕疵という言葉が不動産業界において認知され定着してきたのも本書の著者である「大島てる」氏の貢献が大きいのでないだろうか?
今や、テレビなどにも登場する「大島てる」氏
(本名でない)
「大島てる」氏が事故物件情報の共有サイト「大島てる」を開設したのが2005年。
徐々に認知度を高め、2015年に本書が出版されると、一大センセーショナルを巻き起こしました。
「事故物件」という名は昔から存在していましたが、世間一般に認知を広げたというのが「大島てる」の功績と言えましょう。
さて、本書の書評に入る前に、心理的瑕疵とは何ぞや?を考えてみましょう。
まず、不動産に関わる瑕疵(かし)とは、不動産に関して正常な使用収益を欠く状態いい、大きく次の4つの瑕疵に分類されると言えます。
水漏れ、建物の傾き、造成不良、土壌汚染、アスベスト、PCBの存在など物理的な欠陥がある状態
建築基準法や消防法、旅館業法等の法令違反物件、本来存在しないとされる物権(抵当権、地役権等)の付着など法律的
また、賃貸借契約における賃料未払いなども法律的瑕疵と言える。
周辺環境における嫌悪施設の存在、騒音、悪臭などの人の五感に関わる瑕疵
墓地、ごみ処理場、産廃施設が近隣に存在するなどが端的な環境的瑕疵の例
上記の瑕疵に分類されない通常人の心理に悪影響を及ぼすと社会通念上考えられる瑕疵
自殺、他殺などの事故死があった物件などが典型例
このように瑕疵には、様々な側面があるが、本書で取り扱う瑕疵は、上記のうち一般的に判断が難しい「環境的瑕疵」と「心理的瑕疵」にスポットを当てて、実例を解説していくという流れとなっています。
一般消費者が悪徳不動産屋に騙されないためのマニュアル本という立場をとっており、「借りてはいけない」というタイトルの通り主に住宅の賃貸物件を想定しているものと言えます。
という堅苦しい解説をしましたが、取り扱っているコンテンツが生々しくて面白いです。
不動産事業者にとっては、悩ましい「告知事項」や「物件ロンダリング」についても言及されており、このような言葉が消費者サイドも認知され情報の非対称性がどんどん薄れていっているというのが現状です。
自殺、殺人事件、放火、ドロボウ、NIMBY施設などの有無などの調査漏れで後に損害賠償を喰らうことの無いように業者側も心理的瑕疵についての意識を高めておくべきです。
今後、日本では、超高齢化社会に突入していき、更に貧富の格差が拡大していくことがほぼ確実となる中で、事故物件が増加していくものと予想されます。
不動産業サイドも本書に書かれているような「悪徳不動産屋」の誹りを免れるべく、心理的瑕疵に関する理論武装や正確な告知事項の提供を行うべきであり、知らないでは済まされない時代に入っています。
もっと詳しく心理的瑕疵について学びたいという方は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)のサイトに売買及び賃貸借の心理的瑕疵の裁判例が豊富に掲載されています。
売買:心理瑕疵の裁判例
建物賃貸借:心理瑕疵の裁判例
かなり生々しい裁判例があります。
不動産鑑定評価における心理的瑕疵の減価についてもこのような過去の裁判例を引用して算定するケースが多いです。
事故物件の鑑定評価は弊社に是非ご用命ください。
■第1章 あなたの周りは事故物件だらけ!
-本当にあったこんな事故物件-「多重事故物件~犯罪者が集まるアパート~」「自殺者を引き寄せるマンション」「放火魔が目を付ける"燃え種物件」ほか■第2章 悪徳不動産会社の手口
-事故物件をつかまされないために-
「不当表示が満載!? 物件情報の正しい見方」「悪徳管理会社とモンスター大家に要注意」ほか
■第3章 欠陥だらけの住宅
-こんな物件は借りてはいけない-
「生活が筒抜けとなる壁薄物件」「倒壊の危険性をはらむ漏水トラブル」ほか
■第4章 敵は住宅の周りに潜んでいた!
-対人・環境に脅かされる物件-
「地域の特徴や民度に要注意!」「帰宅するのが憂鬱になる周辺施設」ほか
■第5章 住めば都なんて大嘘!
-住んでから発覚するトラブル-
「損をしない引越業者の選び方」「敷金トラブルに巻き込まれないために」ほか
こんな人におススメ
・住居系不動産を取り扱う事業者全般
書籍データ
出版社 主婦の友インフォス情報社