書籍タイトル 事業用不動産等のマーケット分析と評価 (ヘルスケアアセット/ホテル・旅館/太陽光発電施設)
書評
大手不動産鑑定事務所「谷澤総合鑑定所」の編著による事業用不動産のマーケット分析と評価に関する専門書
いわゆるオペレーショナルアセットと言われるヘルスケア、病院、ホテル・旅館の評価は、賃貸マンションやオフィスビルと違って、そのアセットが獲得するキャッシュフローを査定して、それを更に、運営、経営、不動産所有(資本家)に配分していくという作業が必要です。
当然ながら、事業収入、支出構造がアセットタイプによって異なり、この収支分析が評価のキモとなります。
事務所ビルや賃貸マンションなどの賃貸用不動産の収益価格の算定に当たっては、賃料自体に相場というものが形成され、不動産に帰属する収益の把握が容易です。
一方で、事業用不動産については、直接経営方式、業務委託方式、賃貸借方式と不動産の所有・経営・運営面を誰が担うかによって様々な形態が観念できます。
事業用不動産の評価の難しさは、事業から生み出される収益を不動産所有者、不動産経営者、不動産運営者にどのように分配するのか?という論点に尽きると考えます。
つまり、これらの事業用不動産の収益価格の算定に当たっては、事業収支から不動産に帰属する残余の収益を適正に把握する必要があり、結局のところ、事業分析ができなければ歯が立たないということになります。
概念として説明すると次のようになります。
本書は、各カテゴリーの事業用不動産について事業収支の特性を丁寧に解説した良書です。
本書で、取り上げられているのは、ヘルスケア、病院、ホテル・旅館、再生可能エネルギーと現在注目を集めているアセットタイプばかりです。
特に、ホテルの項目については、谷澤総合鑑定所とケン不動産投資顧問の共同出資会社である「日本ホテルアプレイザル」が主幹しており、ホテル評価に関する極めて有用な指針を提供してくれています。
不動産鑑定士の中には、オペレーショナルアセットの評価に不得手な方も多いのが業界の現状でありますが、今後は事業用不動産の評価が主戦場になっていくことは間違いないので、若手の不動産鑑定士の方にはご一読を強くおススメいたします。
本書の難点としては、新品価格が8000円超えと高いことです。
是非、会社に拝み倒して買ってもらいましょう!
不動産鑑定士だけでなく、大手デベロッパー、不動産投資ファンドにおける物件取得担当者には是非読んでもらいたい一冊です。
序章
1 本書の目的と内容
2 マーケット分析と評価
3 事業収支分析と評価
4 まとめ
第1章 ヘルスケアアセット
第1節 ヘルスケアアセット概観
第2節 シニアリビング
第3節 病院
第2章 ホテル
第1節 ホテルマーケット概観
第2節 ホテルのマーケット及び収支分析
第3節 評価
第4節 ホテルインスペクション(覆面調査)による運営状況調査
第3章 旅館
第1節 旅館マーケット概観
第4章 再生可能エネルギー及び太陽光発電施設
第1節 再生可能エネルギー概観
第2節 インフラファンド市場の動向
第3節 太陽光発電施設/div>
こんな人におススメ
・不動産投資ファンド、AM会社の物件取得担当者
書籍データ
出版社 清文社
谷澤総合鑑定所 (著)