書籍タイトル 東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ (光文社新書)
書評
三浦展さんの最新書「首都圏大予測 これから伸びるのはクリエイティブ・サバーブだ! 」を前回紹介させていただきました。
三浦展さんの本は、都市文化と精緻なデータ分析を掛け合わせた素晴らしい本ばかりであり、全ての本を紹介したいのですが、何せ発刊された書籍が膨大な量なので読むほうも大変です笑
その膨大な著書の中でも、これまで私が読んできた中で「これはイチ押し!」というものを今回も紹介させていただきます。
2017年6月に発刊された「東京郊外の生存競争が始まった!」
本書は、首都圏、一都三県の人口移動を年代別、雇用別、男女別に細かく分析し、更に、「住みたい街アンケート」の結果を掛け合わせて、首都圏の近年の人口移動を解説するものです。
意外と知らない首都圏の状況。データに加えてその分析内容が面白いです。
本書より引用してみましょう。
(略)今や「郊外」が地方化しているのである。
こうして近年、東京23区の人口増加が顕著になったわけだが、特に20~40代の若い年齢層が増えていることが重要である。生産年齢人口(15~64歳)の中でも最も生産性が高い年齢層が増えているのである。逆に、若い世代を23区に取られてしまった地方や郊外は、ますます少子高齢化に悩むことになると予想されるわけだ。
本書では、以上のようにでは、日本の少子高齢化の例外として、東京都心への若年層の人口集中を浮かび上がらせています。
更に本書では、面白いネタが盛りだくさんです。
・未婚者ほど東京都心に集中する傾向がある、
・埼玉の優秀な女性が東京に転出
・埼玉、千葉出身の男性は年収が高まると東京都に転出しやすい傾向が強く、女性もそういう傾向があると言えそうだ。
・武蔵小杉は正社員の男性で人気。秋葉原は非正規の男性で1位
・高円寺は4大卒フリーター男性で1位
・武蔵小山は4大卒フリーター女性で1位
・川越は短大卒以下、浦和は4大卒以上に人気。所沢は不人気
・神奈川県民はやはり自分の県にプライドを持っているのである。
以上のような結論を人口移動のデータやアンケート調査にて縦に横に分析して浮かび上がらせているのが本書の凄いところです。
奇しくも、2020年の前半に発生したコロナショックにより「今後リモートワークが進む」ということが方々で指摘され始めています。
本書を読み返すと、実にリモートワークの動きを先取りしている箇所があり、その先見の明に驚くばかりです。
現在、ようやく在宅勤務を本格化していこうという動きがある。郊外には、毎日の通勤には遠すぎるが、在宅勤務の場所としては環境がよいという地域もある。そうした地域は在宅勤務の適地として訴求し、新たな人口を引き込んだほうがいい。
本書の後半には、郊外の活性化のための「コムビニ」「郊外の夜の娯楽」などのアイディアが盛りだくさんです。
もう、紋切り型の都市開発の時代は終了して、ワクワクするような街づくりが期待されているのだと思います。
本書より「あなた方の計画は人生を欠いている」
是非、本書をとって新しい街づくりのヒントにしてみてはいかがでしょうか?
第1章 デキる女性は郊外を捨てる!?―郊外の人口減少と都心の人口増加(郊外の人口減少
東京都心への人口集中)
第2章 郊外に住みたい街はあるか?埼玉、千葉、神奈川を比較する(1都3県居住者全体で見た住みたい街
埼玉、千葉、神奈川県の居住者の住みたい街
埼玉県 さいたま市と川越市に人気集中。所沢は冴えない
千葉県 正社員には都心に近い市川方面が人気
神奈川県 武蔵小杉の急成長が明らか)
第3章 人口争奪戦が始まった!事例研究:埼玉県
第4章 ベッドタウンをやめて、昼働けて、起業もできる街に!―郊外再生の方向性(1)
第5章 郊外に夜の娯楽を復活せよ!―郊外再生の方向性(2)
こんな人におススメ
・首都圏にて住宅購入を検討される方
書籍データ
出版社 光文社新書
著者 三浦 展
東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ (光文社新書)
おススメ 三浦展さんの都市論本
著者の三浦展さんは、首都圏の街評論家の第一人者であり、これまで多くの話題本を出版してきました。
データを元に、かつ、感性豊かに首都圏の街の未来を明快に解きほぐす天才です。
是非、こちらの書籍もご一読を!