書籍タイトル ホテル・商業施設・物流施設の鑑定評価
書評
前回、谷澤総合鑑定所による「事業用不動産等のマーケット分析と評価」を紹介させていただきました。
事業用不動産等のマーケット分析と評価においては、いわゆるオペレーショナルアセットの具体的なキャッシュフローの分析に力点を置いて説明されており、アセットタイプごとのデューデリジェンス(DD)の際の指針を与えてくれる良書でした。
今回、ご紹介するのは、大和不動産鑑定を始め、日本ホテルアプレイザル、谷澤総合鑑定所などのオペレーショナルアセットの鑑定評価の実務家を中心とした執筆陣による「ホテル・商業施設・物流施設の鑑定評価」です。
この本の最大の特徴は、「鑑定評価と事業評価の違い」を丁寧に解説していることです。
オペレーショナルアセットの鑑定評価は、企業の事業活動が得られる収益のうち不動産が貢献する部分を抜き取ることであり、どこまでが事業評価の守備範囲なのか?どこからが不動産評価の守備範囲なのか?を明確に整理する作業が必要となってきます。
そのため、オペレーショナルアセットの鑑定評価に当たっては、事業評価を理解しなければ、不動産の収益還元法にアプローチできないという宿命を背負っています。
この点、本書は冒頭で、事業評価と不動産評価の違いを詳しく解説しており、不動産評価の立ち位置を明確にしてくれます。
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各アセットの評価に当たっては、本書が特に参考になるのは、各アセットタイプにおける参考資料がリストアップされており、参考書籍や参考となるWEBサイトなどが掲載されていることです。
依頼者から収集すべき資料や、独自に調査すべき項目などのチェックリストにもなり得る情報を提供してくれています。
また、本書は、不動産鑑定評価の観点から執筆された書籍ですが、不動産投資ファンドやAM会社の方が、オペレーショナルアセットに関する不動産バリュエーションの際にも有用な情報を与えてくれることになります。
出版は、2011年とやや古い本ですが、今読み返しても全く古さを感じないものとなっています。
(ただし、掲載データは古いので独自に調査が必要)
先日、おススメいたしました、谷澤総合鑑定所による「事業用不動産等のマーケット分析と評価」と併せて読むと、オペレーショナルアセットに関する不動産評価についてほぼ網羅できるものと考えます。
第1章 不動産評価と事業評価(問題の所在
不動産鑑定評価の概要 ほか)
第2章 ホテルの鑑定評価(ホテル鑑定評価の特徴
ホテル鑑定評価の手順における留意点 ほか)
第3章 商業施設の鑑定評価(商業施設鑑定評価の特徴
商業施設鑑定評価の手順における留意点 ほか)
第4章 物流施設の鑑定評価(物流施設評価の特徴
物流施設鑑定評価の手順における留意事項 ほか)
第5章 他業種の評価への応用―温浴施設の例(温浴施設の基礎知識
評価手順における留意点及び課題)/div>
こんな人におススメ
・不動産投資ファンド、AM会社の物件取得担当者