書籍タイトル 公共R不動産のプロジェクトスタディ ;公民連携のしくみとデザイン
書評
R不動産シリーズを展開するオープン・エー代表:馬場正尊氏の監修による「公共R不動産」のプロジェクトスタディ
未活用の公共空間を如何に活用し都市の魅力を高めていくか?というアイディア集
まず、書籍そのもののデザインが秀逸です。
実例の紹介、写真の豊富さ、その実例のポイントが丁寧に解説されており、書籍というよりプロジェクトデザインのカタログ集という感があります。
昨今、PFIやコンセッションに代表されるように、民間のアイディアや資金を組み合わせて公的不動産を有効活用することが時代の潮流になっています。
従来、公民連携スキームとしては、第三セクター方式や土地信託のようなスキームが多くありました。
これらのスキームは、ハコモノというハード中心主義、お役所主導主義という問題点を抱え、時代の不運も重なり不良債権のヤマを残すに終わりました。
これらの失敗スキームに欠けていたものが「デザイン」や「マネジメント」などのソフト面
本書は、近年における内外のゲリラ的な公民連携スキームを題材として取り扱うことによって、「デザイン」や「マネジメント」の重要性を説いていきます。
個々の公民連携PJを読むだけでもワクワク楽しいですが、本書が秀逸なのは、随所に差し込まれているコラムと妄想企画です。
本書からキーワードを挙げてみましょう。
・なぜ、残念なデザインが生まれるのか
・風景を守りながら企業の参画を促す
・空間全体に一貫したデザインを
・いつも手を焼くのが、行政の思考に染みついている強烈なハコモノ信仰の残像だ
・ソフト事業を先に決めてからハードの発注をするという、順番を変えるのでもいい。
・デザインとマネジメントをセットで考える
・エリアの価値はデザインの価値と結びついている
・デザインだけでなくマネジメントを提案しないと前に進まないことがわかってきました。
巻末には、公共空間活用のための用語集もあり、エリアマネジメント、コンセッション、BID、PFI、TMOなどの最近よく聞かれる公共不動産関連キーワードも収録されています。
これからの街づくりのヒント集ともいえます。
1部 公共空間を使う4つのステップ
1 風景をつくってみる―社会実験
〈コラム1〉 道路を開放するストリートファニチャー
〈妄想企画その1〉 使える公共空間データベース
〈妄想企画その2〉 公募プロセスをひっくり返す逆提案制度
2 仮設で使ってみる―暫定利用
〈コラム2〉 暫定利用と連動したクリエイティブな再開発
3 使い方を提案する―サウンディング
〈コラム3〉 公募プロセスを変革する民間提案制度
〈妄想企画その3〉 暫定利用しながらトライアル・サウンディング
〈妄想企画その4〉 事業者と自治体をつなぐコーディネート・エージェント
4 本格的に借りてみる―民間貸付
〈コラム4〉 公共空間の質を保つデザインコントロール
【インタビュー】 丹埜 倫(R.project)
―遊休公共施設×合宿事業で新たなマーケットを創出
2部 公共空間をひらく3つのキーワード
5 シビックプライドをつくる―オープンプロセス
〈妄想企画その5〉 クリエイティブに選ぶ審査員
〈妄想企画その6〉 ハコモノの呪縛から解く、ハードとソフトの一体発注
【インタビュー】 町田 誠 (国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長)
―公園の使い方を開放するルールづくり
6 領域を再定義する―新しい公民連携
〈コラム5〉 健全な公共投資のくみ、BID/TIF
【インタビュー】 長谷川浩己(オンサイト計画設計事務所)
―オープンスペースのデザインからエリアを変える
7 “公共"を自分事にする―パブリックシップ
〈妄想企画その7〉 硬直した公共資産を動かすローカルファイナンス
〈妄想企画その8〉 公共施設のポジティブな閉じ方
公共空間活用のための用語集
おわりに
こんな人におススメ
・PFI、コンセッション事業など官民連携PJ推進事業者
・不動産業界、デベロッパー志望の就活生
書籍データ
出版社 学芸出版社
馬場正尊 (著)他