不動産業 宅地建物取引業

不動産業と宅建業は同じではありません!

殆どの不動産会社は、宅地建物取引業(以下、宅建業)を取得しておりますので、不動産業=宅建業者というのが、世間一般の認識だと思われます。

ただ、厳密には、不動産業の中でも、不動産に投資して単純にそれを賃貸しているだけの所謂「大家業」については宅建業の免許が不要であったり、サブリース業のみを行っている事業者も宅建業の免許が不要であったりと不動産業であることと宅建業者であることは同義でないです。

不動産業と宅建業の関係を図示すると次のようになります。

宅建業の免許が必要か否かは各事業の内容を細かく見てみないと判断がつきません。

不動産業界のプロの中でも宅建業=不動産業と勘違いしている方も稀にいらっしゃいます。

宅地建物取引業法の定義

宅地建物取引業(以下、宅建業)の定義を見てみましょう。

宅地建物取引業法 第二条第二項
宅地建物取引業
宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。

非常に分かりづらい条文ですが、図解すると以下の通りになります。

このように、同じ不動産業でも自ら貸主、つまり貸家業(ビル賃貸業、賃貸マンションの大家業など)は宅建免許が不要なのです。

対象となる不動産は?

宅建業法第二条第二項では、宅建業免許が必要とされるモノは、「宅地若しくは建物」と定義されています。

ここでややこしいのは、宅建業法で定められた「宅地」「建物」とは世間一般の認識である「宅地」「建物」との定義・認識のずれがあることです。

宅建試験でも学習された方も多いと思いますが、宅建業法の規制の対象となる「宅地」については以下のように分類されます。

【用途地域内】
土地の全て
ただし、道路・公園・河川等の公共施設の敷地は除く
【用途地域外】
 ・建物の敷地として既に供されている土地
 ・建物の敷地として今後供されることを目的として取引される土地

 従って、登記簿上の現況地目が農地や山林であっても、目的が宅地として取引される目的で取引される場合は宅建業法の「宅地」となります。

よく論点となるのが月極駐車場です。

不動産会社が青空駐車場の賃貸借の紹介を行って仲介手数料を収受する場面を見ていくと、地主が駐車場事業者に土地を賃借する局面における仲介(媒介)については、宅建業免許が必要とされますが、当該駐車場事業者がエンドユーザーに車1台ごとを賃貸する際の月極駐車場契約には宅建業免許は不要とする運用がなされています。

ご参考)不動産適正取引推進機構(REITO)のWEBサイトより

Q3 不動産会社のあっせんで個人の地主さんと駐車場賃貸借契約を結びましたが、不動産会社から仲介手数料として月額賃料の1.5か月相当分を請求されました。宅建業法では月額賃料1か月ではないのですか。

A3 駐車場として利用することを目的とする土地の貸借の媒介は、原則として宅建業法の適用があります。しかし、車1台ごとの月極駐車場の貸借の媒介については、業法の趣旨及び規制の実益等を考慮して、業法上の問題としては取り扱わない運用がなされています

対象となる取引形態は?

自ら貸主の場合 宅建業免許は不要

上記の表の通り、不動産賃貸業(大家業)は宅建業法の範疇から外されています。

従って、サラリーマン投資家の方や事業法人が所有不動産を単に賃貸に出す行為は宅建業の規制の範疇外となり、「反復継続して不特定多数」に賃貸したとしても宅建業の免許は不要です。

しかし、ここで注意が必要なのは、この保有不動産を「反復継続して不特定多数」に売却する場合においては、宅建業の免許が必要となります。

この場合は、自ら売主となるケースなので、宅建業法の免許を取得する必要が生じることに加え、宅建業法で定められる「自ら売主制限」を受けることになります。

※自ら売主制限:宅建業者として自ら売主となる場合の業法制限であり8種制限と言われる。宅建業者でない個人、法人が買主となる際において、手付金の制限や契約不適合責任(旧法の瑕疵担保責任)などの制限を受ける。

サブリース事業 宅建業免許は不要

ここで、よくある質問として、「サブリース業に宅建免許は必要か?」というご質問をお客様から頂くことが多いです。

結論から言えば「自らの保有物件を直接賃貸する場合」であろうが「他人の物件を借り上げ、それを転貸する場合(サブリース)」であろうが、宅建業の免許は不要です。

宅建業法第二条第二項をよく見ると、どこにも「当事者となって賃借する場合」には触れられていないことが分かります。

サブリース業を分解して考えると、物件保有者から物件を借り上げる行為→他人のものを賃貸(つまり転貸)する行為ともに「賃借の代理若しくは媒介する行為」でないので、宅建業法の規制の範疇外となります。

少し難しい話になりますが、例えばファンドスキームで見られるマスターリースにおいて、マスターレッシ―(賃借人兼転貸人)も宅建業の免許は不要であります(たまたま宅建業免許業者がマスターレッシーになるケースはありますが)。

ただし、サブリース物件の賃貸仲介を貸主又は借主から仲介手数料を収受して行うには、当然ながら「媒介」に該当するので宅建業の免許が必要であることに注意が必要です。

不動産管理業 宅建業免許は不要

その他、マンション管理業者やビル管理業者になるには宅建業の免許が必要かという質問をよく受けます。

単にマンションやビルを管理している立場である純然たる不動産管理業は、宅地建物の賃借の媒介・代理に該当しないので、宅建業の免許は不要です。

ただし、不動産管理業から派生して、管理を委託されている物件の賃貸仲介や売買仲介を行う場合は当然ながら宅建業の免許が必要なことに注意が必要です。

不動産管理業者も宅建免許を持っている理由がここにあります。

また、オーナーの代理人として賃貸借契約とエンドユーザーと締結する行為も宅建業の免許が必要となることに注意が必要です。

業として行うこと

宅建業法第二条第二項でいう「業して行う」という解釈には、2つの側面があります。

・不特定多数の者に対して
・反復継続して行うこと

宅建業法で定められた行為について、この2つの要件を満たす取引を行う場合に宅建業免許が必要となります。

逆に言えば、特定の者に対して行う行為や、一回限りの取引については宅建業の免許は不要ということになります。

以下、ケースごとに見ていきましょう。

ケース1 自社社員のために自社保有地を分譲したり、他社の物件を斡旋する行為

宅建業の免許は不要
自社社員は不特定多数に当たらないため、反復継続しても宅建業の免許は不要となる。

ケース2 自社遊休地に賃貸マンションを建設して、一括して売却する場合

宅建業の免許は不要(場合により宅建免許が必要)
ただし、当該遊休地が1か所で1回限りであれば問題ないが、複数の有休地に複数回賃貸マンションを建設し、不特定多数の投資家に販売する行為となれば、宅建業の免許が必要となります。

ケース3 自社遊休地に分譲マンションを建設して、一括して分譲業者に売却する場合

宅建業の免許は不要(場合により宅建免許が必要)
この場合は、反復継続して分譲している主体は分譲業者なので、売主側では宅建業免許は不要となりますが、ケース2と同じように、不特定多数の分譲業者に対して反復継続して一棟マンションを販売する場合においては、宅建業の免許が必要となります。

ケース4 自社遊休地に分譲マンションを建設して、宅建業者に媒介や代理販売を委託する場合

宅建業法の免許が必要
実際に販売を行う宅建業者側に宅建免許が必要なのは、直感的に理解できると思いますが、ここで注意が必要なのは、売主として宅建業者に媒介や代理を委託したとしても、売主が不特定多数に反復継続して販売していることに変わりないため、やはり売主として宅建業の免許が必要となります。
(民法上、代理権の効果は本人に帰属するため)

1か所の遊休地について分譲マンションを建設したり、区画分譲を1回だけ分譲行為を行う場合でも、複数戸・複数区画となるので、不特定多数に反復継続となってしまうことに注意が必要です。

ご参考)国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方より
1回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして 行う宅地の販売等複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する。

いかがでしたでしょうか?
宅建業の免許が必要とされるケースは、様々な観点からの検討が必要です。

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