資産価値評価は、Valuation(バリュエーション)と呼ばれています。
資産価値評価には、不動産以外にも企業価値の評価もあり、不動産評価もこの企業価値評価から派生した考え方が多く含まれています。
この資産価値評価の多くは、米国のモデルをパクったものが殆どなので英語が多いというのが特徴です。
ここでは、不動産評価の現場にてこれまで聞いてきた評価に関連する横文字をABC順に並べて解説してみました。
不動産ファンド業界においては、結構、使われる用語なので、辞書代わりにご利用ください。
ADR Average Daily Rate
ホテル用語。平均客室単価。なお、日本では、ホテルの客室販売に当たっては1室につき一人当たりの宿泊価格の設定を行うことが一般的であるが、ホテル評価の際のADRの計算においては、1室あたりの販売価格となることに注意が必要である。
CAPEX Capital Expenditure
資本的支出。キャペックス。不動産CFのうち、償却前純収益(NOI)の算定後、日常修繕費以外の将来発生することが見込まれる建物の躯体及び設備の更新費用を見込まなければ正確なCFと言えない。従って、不動産の収益価格の算定に当たっては、NOIから当該CAPEXを控除してNCFを算定したものを資本還元して評価を行う必要がある。
CF Cash Flow
キャッシュフロー。その名前のごとく資金の流れであるが、不動産価値の把握の源泉となるものがCFである。不動産CFは企業評価の際のEBITDAと同様に、損益計算上の調達利息、法人税、減価償却費を考慮前の水準で把握されることに留意が必要である。
CR Cap Rate
還元利回り。キャップレート。収益還元法のうち直接還元法(DC法)による収益価格算定の際に用いられる資本還元レート。
DC Direct Cap
直接還元法。不動産が将来生み出すであろう純収益を還元利回り(CR)にて資本還元する収益価格の算定方法。資本還元すべき純収益は、将来安定的に獲得されるであろう標準化された純収益となる。
DCF Discount Cash Flow
割引キャッシュフロー法。不動産が将来生み出す各期CFの現在価値を割引率(投資リスク)にて除することにより資産価値を求める手法。不動産鑑定評価の場合、投資期間中の期中CFの現在価値と投資期間の最終期における売却価格を現在価値に割り戻したものの合計がDCF法による収益価格となる。なお、DCF法は単に直接還元法を分解して説明しているだけであり、直接還元法とDCF法のどちらが優れているかと言う議論はナンセンスである。
EBITDA Earnings Before Interest and Taxs Depreciation and Amortization
企業評価の際の収益指標。イービットディーエーと読む。支払利息控除前、税引き前、償却前ということになり、不動産評価ではNOI(又はNCF)と同じ概念。不動産評価の際においては、企業の決算書から対象不動産のCFを把握する必要があるケースもあり、金利負担、減価償却負担、法人税の負担が不動産価値評価に混入しないように注意が必要である。企業価値評価でも不動産評価でも同じ作業が必要である。
FFE Furniture・Fixture・Equipment
ホテル用語。ホテルに備えつけられる家具(Furniture)・什器(Fixture)・備品(Equipment)。FFEの所有はホテルの所有又は経営会社に所属し、管理はオペレーターが行うことが一般的。ホテルのファンドスキームでは、このFFEの更新費用を誰が、いつ、どの程度負担するかを事前に取り決める必要がある。通常は、オーナーであるファンドがFFEリザーブ勘定に定期的に積立てを行い、それを取り崩して修繕・更新していくのが一般的。
GOP Gross Operating Profit
ホテル用語。ホテルオペレーターの監督下に置かれるキャッシュフロー。不動産オーナーに支払う賃料、不動産オーナーが負担すべき公租公課、建物修繕コスト(償却費)、FFEコスト(償却費)、金利を控除する前段階の純収益となる。通常、ホテルオペレーターの実績判定指標ともなり、業務委託方式の場合は、オーナーはホテルオペレーターに対してGOPに連動した報酬を支払うことになる。
IRR Internal Rate of Return
内部収益率。不動産の期中の運用から獲得されるIncome Gainと不動産の売却によって獲得されるCapital Gainを総合した総合的な投資利回り。IRRには、不動産のIRRとエクイティ投資家の投資持分に対応するエクイティIRRの二種類がある。
Multiple
マルチプル。元々は企業M&Aの際における企業価値評価の一手法である「類似企業比較法」を別称マルチプル法と呼ばれている。不動産投資の場合のマルチプルは少し違った意味で用いられ、不動産の投資金額に対する総キャッシュフロー(インカムゲイン+売却金額)の割合を一般的にマルチプルと呼んでいる。IRRが時間の概念を考慮した総投資利回りであるのに対して、マルチプルは単に、投資額と投資回収額の絶対値を比較することから、分かりやすい指標となる。IRRにも不動産の価格ベースとエクイティベースの2種類のIRRがあるようにマルチプルも物件価格ベースのマルチプルとエクイティCFベースのマルチプルがある。
なお、初期投資額と売却価格の割合を単にマルチプルと表現する人もいるが厳密には間違っている。
NCF Net Cash Flow
ネットキャッシュフロー。不動産のNCFは、償却前純収益(NOI)から更に資本的支出(CAPEX)を控除したものがNCFとなる。不動産鑑定評価における収益価格の算定に当たっての資本還元レート(還元利回り)に対応するのが、NCFとなる。
NOI Net Operating Income
不動産純収益の一つで償却前純収益。NOIから大規模修繕費(CAPEX)を差し引いたものがNCFとなる。
NPV Net Present Value
正味現在価値。投資判断を行う際に用いられる指標である。つまり、将来CFの投資現在から投資額を控除したものであることから、プラスの場合は投資実行、マイナスの場合は投資撤退等の判断に用いられる。不動産評価の場合、将来CFの現在価値がすなわち収益価格となることから、NPVが議論されることは実際に少ない。
Occ Occupancy Ratio
ホテル用語。客室稼働率。通常は100%が上限となるが、デイユース、ラブホテルなど一日で数回転するホテルの場合は、当該Occが100%を超えるということも理論上はあり得る。ホテル収支でOccが100%を超えている場合は、宿泊とデイユースの利用比率、宿泊単価とデイユース単価の違いを把握する必要がある。
PML Probable Maximum Loss
50年に10%以上の確率で発生しうる最大の地震動(約475年に1回の大地震)が発生した場合における建物再調達原価に対する損失額の割合をPML値という。PML値の調査は、不動産取得の際におけるDD(デューデリジェンス)にて建物調査会社が建物調査の一環として行う。
Rack Rate
ホテル用語。ラックレート。ADRが1室あたりの実際の販売価格であるのに対して、Rack Rateは、一室当たりの正規の販売価格となる。語源は、Rack(棚)の中に入っているパンフレットに記載されている宿泊料金から。
Rent-Roll
レントロール。賃貸条件一覧表。賃借人の属性、賃貸借契約開始日、賃貸面積(専有面積)、賃貸期間、賃料・共益費、預かり敷金などが記載される。このレントロールは収益不動産の価格査定における収益の源泉を把握するための最重要資料と言える。なお、個人情報保護の徹底から、レントロールには個人名を記載しないというのがAM業界の常識的ルールとなっている。個人名が記載さえたレントロールは、「個人」と置き換える必要があり。
RevPar Revenue Per Available Rooms
ホテル用語。客室当たりの実際収入。ホテルの客室販売平均単価(ADR)に稼働率(Occ)を乗じたもの。ホテルの客室の年間販売収入は、RevPar×365日となる。ホテルの経営指標としては、最も重要な指標となる。適正なADRを設定して高稼働率を導き出すことによりRevParが向上するということになり、ホテルの稼働状況の真の実力を示す指標となる。
TCR Terminal Cap Rate
最終還元利回り。DCF法における価格算定の際にCF算定期間の最終期末に不動産を売却することを想定する。この際に用いられる資本還元レートを最終還元利回り(TCR)という。最終還元利回りは将来の時点において還元される利回りとなるため、不動産の築年数の経過等を考慮すれば、現在時点の資本還元レートより高くなる傾向がある。