書籍タイトル 地方消滅 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)
書評
冒頭で強く申し上げておきたいのは、不動産関連事業者で、まだ読んでいないという人は絶対に読んで欲しい本です。
本書は、著者である増田寛也氏を代表とする日本創成会議作成の報告「成長を続ける二一世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』」、いわゆる「増田レポート」の公表の直後である2014年6月に出版されたものであり、増田レポートの要約版という位置づけとなっています。
本書が、出版された直後にはタイトルが直球すぎて相当なセンセーションを呼びました。
人口動態を考えずに不動産は語れません。
これまでは日本の成長は人口増加に支えられてきた側面がありますが、既に総人口が減少する社会に突入しています。
当然、利用する人が増えれば不動産価格が上がり、利用する人が減少すれば不動産価格が下がるという単純な構造があります。
本書では、全自治体の約半数となる896都市が消滅可能性都市としてリストアップされました。
2010年~2040年までの間に「20~39歳の女性人口」が5割以上減少する都市
当時、東京の豊島区が消滅可能性都市のリストに入っており、驚いた人も多かったですね。
女性20~39歳が減少するということは、人口論で言うと、将来人口が減少していくということに直結する。ただそれだけ単純なロジックです。
当然、名指しされた地方からは反発の声が相次ぎ、一大センセーションを巻き起こすことになりました。多くの批判本がそこらで出版された記憶があります。
じっくり読むと、超合理的、超現実的なことと事実を書いているだけなのですが、何故か地方切り捨て論に誤解されてしまった面があります。
確かに本書で指摘されていることはセンセーショナルな事実ばかりです。
本書から一部引用してみましょう。
この本を読むと不動産ビジネスに限らず、日本でビジネス展開するということ自体がリスクに思えてなりません。
奇しくも、2020年3月に発生した新型コロナウイルスの影響により、リモートワークが叫ばれ、都心集中の弊害が見直す機運が高まっています。
しかしながら、都市機能を維持する前提としての日本人の人口が総じて減少するということは、都市間での人の奪い合いの流れが変わるだけであり、根本的な解決策になりません。
著者の増田寛也さんは、建設省の官僚を務めたのち、岩手県知事、総務大臣を歴任した方であり、今や政治家という面が強い方です。
前回の都知事選で小池百合子現東京都知事に惜敗した立候補者という記憶がある方も多いのでないでしょうか?
本書は、現代日本における人口論の走りとも言える本です。
私が意外だったのは、不動産事業者の方でこの本があまり話題に上がることがなかったと記憶しており、今、この本の存在を語る人はいなくなったという感覚を持っています。
不動産事業者も、日本の人口減少、高齢化に目をそらすことはできないのです。
本書に書かれている日本の将来の現実を認識して、強かに事業展開していくことが必要だと思うのです。
序 章 人口急減社会への警鐘
第1章 極点社会の到来――消滅可能性都市896の衝撃
第2章 求められる国家戦略
第3章 東京一極集中に歯止めをかける
第4章 国民の「希望」をかなえる――少子化対策
第5章 未来日本の縮図・北海道の地域戦略
第6章 地域が活きる6モデル
対話篇1 やがて東京も収縮し、日本は破綻する 藻谷浩介×増田寛也
対話篇2 人口急減社会への処方箋を探る 小泉進次郎×須田善明×増田寛也
対話篇3 競争力の高い地方はどこが違うのか 樋口美雄×増田寛也
おわりに――日本の選択、私たちの選択
こんな人におススメ
・不動産業、デベロッパーの就活生
・不動産投資家
書籍データ
出版社 中公新書
著者 増田 寛也
地方消滅 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)
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