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おススメ書籍 【最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本】

書籍タイトル 最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本

書評

最近、ネットメディアでよく見られるSaaSやMaaSという言葉。

私がMaaSという言葉を知ったのは、2019年4月に三井不動産がMaaSグローバルに出資したというニュースを見たのが初めてでした。

MaaSと類似するSaaSという言葉があります。

「SaaS」(Software as a Service:「サース」または「サーズ」)とは、ソフトウェアを利用者(クライアント)側に導入するのではなく、提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウェアを、インターネット等のネットワーク経由で、利用者がサービスとして利用する状況を指します。(IDC FrontierのWEBサイト解説より)

MaaSという言葉は、このSaaSを意識して作られた言葉らしく、SaaSのほうが先らしいですね。

その後、ネットメディアでは、SaaSやMaaSという言葉が飛び交うようになっていき、さすがに少し勉強しておこうと、MaaSの最新情報が素人にもわかるような書籍を本屋に探しに行きました。

書店には既に、多くのMaaS本が並んでいます。専門用語だらけの本や概念中心の本は避け、ぶっちゃけMaaSって何よ!ということがザクっと理解できる本を探し求めました。

そこで、ド素人の私にも分かりやすかった本が本書です。

今回取り上げるMaaSは、フィンランドのベンチャー企業であるMaaS Globalの創始者サンポ・ヒエタネン氏により提唱された概念です。

本書の中の「そもそもMaaSとは何のこと?」より以下引用してみましょう。

MaaSとは、「Mobility as a service」の略で「マース」と発音されます。~略~
彼(サンポ・ヒエタネン)が目標としたことは「あらゆるモビリティサービスを組み合わせて、クルマを所有する生活よりも、より良い生活を実現するサービスを作り出すこと」です。
「あらゆるモビリティサービス」つまり、既存の公共交通(鉄道、バス、路面電車)に加えて、ICTの進展により生まれた「次世代モビリティサービス」、例えば、ライドシェア、カーシェアリング、自転車シェアリングなどを組み合わせれば、マイカーを所有するより環境面でもより良い暮らしができるのではないか、というアイディアです。

本書よりMaaSのイメージ図が非常に分かりやすいので転載させていただきます。

まず本書では、日本でMaaSの領域で先行しているトヨタ自動車の先行事例を取り上げます。

トヨタ自動車は2017年の段階で既にMaaSグローバルに出資し、豊田章男社長自身が「トヨタを自動車を作る会社からモビリティカンパニーにモデルチェンジする」と宣言するなどMaaSの導入に最も積極手な日本企業です。

トヨタは、静岡県裾野市の工場跡地に実証都市「コネクテッドシティ」を作る計画をしています。
(※トヨタは既に、ミサワホームを買収するなどトヨタホームにてデベロッパー事業に本格参入しています。更に、パナホームとの経営統合を公表し住宅開発事業に力を入れています。)

次に、日本の地方型MaaS、観光型MaaSについても先行事例を挙げながら解説しています。

MaaS分野がどうしても、日本のPC業界、スマートフォンが歩んだ歴史とどうしてもダブってしまうの私だけでしょうか?

ハード中心主義、自前主義がPC業界、スマートフォンの衰退の原因であり、同じことがMaaS導入でも起こりそうな気がしてなりません。

本書でも、日本のサプライヤーの取り組み方を見るとMaaSアプリ開発が目的化しがちでという点も指摘しています。

本書を読めば読むほど、フィンランドやドイツなどの欧州で成功を収めつつあるMaaSが日本での浸透が難しいのではと感じざるを得ません。

日本の縦割り行政、公共交通サプライヤーの多さ、日本的マイカー・マイホーム志向などの文化の違いまで考えると日本での定着は相当ハードルが高いのではないでしょうか?

今後のトヨタ自動車や三井不動産などの不動産事業者がどのようにMaaSに絡んでいくのか?その他中小企業は傍観せざるを得ないのか?など考えさせれらる一冊でした。

これから不動産事業者にとっても重要なキーワードになるであろうMaaS

ザクっと理解するには最適の一冊です。

参考情報 三井不動産とMaaSグローバルの提携関連記事

三井不動産のリリース情報
2019年4月24日 三井不動産、世界初の本格的なMaaSプラットフォーム「Whim」と街づくりにおけるMaaSの実用化へ向けた協業で契約締結
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2019/0424/

日経クロステックの記事
MaaSは破壊かつ融合だ 三井不動産×MaaSグローバル講演
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00219/00014/

本書の構成
MssS巻頭用語集

【第1章】MaaSとは何か
1-1 そもそもMaaSとは何のこと?
Column MaaSは人によって定義が異なる
1-2 MaaSがフィンランドで生まれた理由
1-3 法改正でMaaSを加速させるフィンランド
Column APIとは
1-4 世界初のMaaSアプリ「Whim」
1-5 スウェーデンで生まれたMaaSレベルとは
1-6 業界を横断するモビリティエコシステム

【第2章】MaaSへと至るさまざまな交通改革
2-1 脱クルマ依存
2-2 運輸連合、ゾーン制、信用乗車
2-3 米国や日本でも進むLRTの普及
2-4 移動手段の転換を促すために
2-5 日欧で異なる交通アプリの進化

【第3章】MaaSの礎となるデジタルテクノロジー
3-1 プラットフォームビジネスとは
3-2 都市交通政策のツール
3-3 MaaSを構成するモビリティサービス
3-4 MaaSとデータ連携
3-5 MaaSで拡がる自動運転社会
3-6 MaaSを日本で取り組むときのコツ

【第4章】海外のMaaS実例
4-1 ドイツは自動車メーカーもクルマの台数を減らすことに協力
4-2 フランスで動きめた巨大MaaS
4-3 実証実験から本格導入へスウェーデンの「UbiGo」
4-4 スイス 合理的かつユーザーファースト 4-5 ライドシェアのパイオニア 米国 Uberが目指す交通統合
4-6 台湾は日本の事例として役立つ
4-7 インターナショナルプラットフォームへの布石

【第5章】MaaSと自動車メーカー
5-1 100年に一度の大変革
5-2 CASEとMaaSの関係を探る
5-3 20年の歴史を持つトヨタのモビリティサービス
5-4 ソフトバンクとトヨタのタッグが目指す道
5-5 ダイムラーのモビリティサービス戦略
5-6 日産とDeNAのモビリティサービス
5-7 海外ソフトウェア企業の動向

【第6章】日本版MaaSの作り方
6-1 民間主導の短所と長所
6-2 日本政府のスマートモビリティ戦略
6-3 JR東日本の「モバイルSuica」と「Ringo Pass」
6-4 地域の再構築に挑む東急
Column 郊外型MaaSとは
6-5 最先端企業の連合体を作る小田急
6-6 福岡のバス路線網を見直す西鉄
6-7 トヨタのモビリティサービス「my route」
6-8 「経路検索」開発企業の動向
6-9 レストランやショップとの連携に期待

【第7章】日本オリジナルの観光型MaaS
7-1 観光型MaaS導入と共にすべきこと
7-2 観光地の仕組みを新創する東急 伊豆半島の「Izuko」
7-3 JTBが考える観光型MaaSとは
7-4 ANAのUniversal MaaS
7-5 観光フリーパスのデジタル化
7-6 日本のバス会社の取り組み

【第8章】日本ならではの地方型MaaS
8-1 地方型MaaS導入と共にすべきこと
8-2 フィンランドの地方型MaaS
8-3 自治体の取り組み1:宇都宮市/京丹後市
8-4 自治体の取り組み2:横須賀市/高松市
8-5 需要は少ないが統合はしやすい
8-6 公共交通の無料化というもうひとつの流れ

【第9章】ラストマイルMaaSをどうするか
9-1 ラストマイルとは
9-2 ラストマイル問題をどう解決するか
9-3 電動車いすWHILLの取り組み
9-4 超小型モビリティとグリーンスローモビリティ
9-5 日本ならではのきめ細かさを武器に

こんな人におススメ

・不動産業界の新規事業開発担当者
・不動産テック関連事業者

書籍データ

書籍タイトル 最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本
出版社 ソーテック社
楠田 悦子 (著), 森口 将之 (著)

最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本

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