書籍タイトル 金融マンのための 不動産ファイナンス講座<第2版>
書評
公認会計士である山下章太さんの「金融マンのための」シリーズの不動産ファイナンス編
「金融マンのための」とのサブタイトルとなっていますが、逆に「不動産ビジネスマンのための」と読み替えて読んで欲しい一冊です。
不動産業界からの見れば金融・ファイナンス領域はコインの裏表の関係であり、正に表裏一体の関係にあります。
従来型の不動産会社では、各企業の財務部が伝統的なファイナンス手法であるコーポレートファイナンスにて如何に金融機関から最適調達するか?ということが重要であり、個々の不動産関連プレイヤーにおいては、ファイナンス領域については、他人ごとで済ませられる時代でありました。
しかし、総合不動産会社を中心として、私募ファンド、J-REITなどの広義の証券化ファイナンスの手法の活用が進み、現場での物件EXIT実務の相手側がファンドであったり、REITであったりと不動産関連ビジネスが重層化していると言えます。
また、ビルや住宅部門の開発、仲介セクションの若手が突然、不動産投資顧問会社へ出向を命じられるなどが常態化していると言えましょう。
このような環境下においては、個々の不動産関連プレイヤーにも一定のファイナンス知識の習得と実践での応用が益々重要なスキルとなってきております。
この不動産領域とファイナンス領域の美味しいどころを抽出して解説してみせているのが本書「金融マンのための不動産ファイナンス講座」です。
本書の良さを端的に表現すれば、「難し過ぎず簡単過ぎない」という点です。
不動産ファイナンス関連の論点を網羅しているにも関わらず、具体例的な数値や簡略化された図式などをふんだんも用いて丁寧に解説してくれています。
全てを読む時間がない人には、第2章の「不動産ファンアンスを学ぶ前に知っておくべき基本」だけでもしっかり読み込めば、不動産ファイナンスのイロハは学習できる構成となっています。
本書のその先を読み進めるには、事前知識として一定の会計知識が必要です。
ただし、その一定の会計知識も簿記3級レベルで十分理解できると思います。
不動産業界の新人にとっては、ややヘビーな内容かもしれませんが、不動産と金融の更なる蜜月関係が今後予想されますので、本書で事前にアウトラインでも理解しておくと後悔しないと思います。
また、不動産AMへの転職の際は、不動産ファイナンスの知識が入社後に必須になるので、スキル習得のためにもファイナンス知識を目いっぱい高めておくと転職チャンスも広がると考えます。
第1章 不動産ファイナンスに関する基礎知識
第2章 不動産ファイナンスを学ぶ前に知っておくべき基本
第3章 不動産のデット・ファイナンス
第4章 不動産のエクイティ・ファイナンス
第5章 不動産の担保価値
第6章 不動産の会計・税務
こんな人におススメ
・不動産業界、金融業界の新人
書籍データ
出版社 中央経済社
山下 章太 (著)
金融マンのための 不動産ファイナンス講座<第2版>
私の書いた不動産ファイナンス入門も是非ご一読ください!
10回のシリーズで不動産ファイナンスのイロハを学習できると思います。