書籍タイトル タワーマンションは大丈夫か?!
書評
近年、三大都市圏のみならず地方の駅前商業地の再開発でセットで供給されるようになったタワーマンション
タワーマンションの供給が増加する中で、自ら住む人、作る人、管理する人、近隣で生活する人とタワーマンション関係人口も増加している時代の流れとなっています。
従前、人口増大傾向であった日本では、都心の地価高騰、用途地域や建築基準法の制限から都心から郊外に都市が拡大していきました。
しかしながら、過酷な通勤ラッシュが忌避され、今や富裕層を中心に都心への絶対的近さ、つまり職住接近を住まいに求める価値観への変化が起こっています。
更に、バブル崩壊後の都心の地価抑制、容積率緩和や総合設計の導入など建築基準法の改正の制度の後押しなど経済環境や政策の変化などによりタワーマンションの供給が急増しました。
タワーマンションは、駅や職場へのアクセスが良好であることや共用部の充実度が一般のマンションや戸建てと比べると圧倒していることなどにより、メリットが大きい居住形態と言えます。
更に、日照、眺望などの快適性を考えると他の居住形態では得られないプレミアム感を享受することができます。
このように大きなメリットがあるにも関わらず、近年は、供給過多により都市が過密しすぎ小学校などのインフラ構築が間に合わない、駅が溢れて逆に通勤地獄が発生しているなどのデメリットが指摘されるようになりました。
本書はタイトル「タワーマンションは大丈夫か?」のタイトルの通り、タワーマンションのデメリットや死角について各分野の専門家が研究を元に論じていくというスタイルを取っています。
本書の出版は、プログレスという不動産プロ向け出版社によるものであり、基調としてはアカデミックさを醸し出しています。
「タワーマンションは大丈夫か?」というタイトルであると世間的には、「またタワマンDisり本か」いう期待される方も多いと思いますが、本書は、あくまでタワーマンションのメリットとデメリットを専門家が淡々と比較しつつ、やや問題点多しというトーンとなっていますので、「やっぱりタワマンはダメだわ」ということを期待して読むと肩透かしを食らうかもしれません笑
本書で、特に面白かったのが「タワーマンションは管理しにくいのか?」の項目で取り上げらている仙台のタワーマンション「ライオンズタワー仙台広瀬」の管理事例
マンション管理における経営的視点が如何に重要かを事例を元に学ぶことができます。
利用頻度の低いが維持コストの高いプールや機械式駐車場など「デベの売り切り発想によって作ってしまった過剰施設」をどのように適正化していくかという問題に対する事例研究となっており、読み応えがありました。
マンション分譲業者やマンション管理会社のプロ担当者の方には是非一読いただきたい一冊です。
この一冊でタワーマンションの歴史から法制度、価格論、管理の問題点などを俯瞰することができます。
一方で、エンドユーザーの視点としては、少し理論的すぎて読み疲れするかもしれません。
ただ、タワーマンション投資やタワーマンション購入を真剣に考えている方には、ご一読を強くおススメします。
タワーマンションはコンパクトシティ実現に寄与するのか? 安藤 至大
タワーマンションは都市景観を壊すのか? 浅見 泰司
タワーマンションは廃墟化するのか? 村島 正彦
タワーマンションは供給過剰か? 米山 秀隆
タワーマンションは投資によいか?――高さによる価値の差を考慮した管理運営――中城 康彦
タワーマンションは暮らしやすいのか? 高井 宏之
タワーマンションではコミュニティ形成は難しい? 齊藤 広子
タワーマンションで子育ち・子育ては心配ないのか? 大谷 由紀子
タワーマンションのエレベータが止まるとどうなる? 森田 芳朗
タワーマンションは管理不全になりやすい? 齊藤 広子
タワーマンションは第三者管理がよいのか? 佐藤 元
タワーマンションでは修繕費が割高? 関 栄一
タワーマンションは建替えが出来るのか? 大木 祐悟
タワーマンションは管理しにくいのか?――仙台の大規模タワーマンションの経験に学ぶ―― 杉山 丞
座談会――タワーマンションは大丈夫か?!
こんな人におススメ
・マンション管理業者、マンション管理組合の理事
・タワーマンション購入検討者
書籍データ
出版社 プログレス
齊藤 広子 (著), 浅見 泰司 (著)