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不動産ファイナンス入門その3 【ローンの法的位置づけ】

これまでの記事では、ローンの支払いについての経済的条件について解説してきました。

今回は、一歩立ち止まって、ローンとは法律上どのような位置づけにあるのかを見てみることにします。

ローンとは金銭消費貸借

ローンは、消費者ローン、自動車ローン、住宅ローンなど、事業ローンなど生活、事業のあらゆる面で活用されていますね。

このローン契約の正式名称は「金銭消費貸借契約」といいます。

俗に「金消(きんしょう)契約」と言われます。

細かく言うと、「金銭を消費貸借する契約」であり、民法には「消費貸借」の規定があります。

民法第587条 消費貸借
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

「おカネに色は付いていない」ということを聞いたことがあるでしょう。

例えば、Aさんが銀行からお金を借りると、そのお金を使いますよね。
そして、Aさんは銀行に同じ種類、数量のもののおカネを返済することを約束します。

ここでは、当初借りたお金を「消費」してしまうという意味において、ローン契約は民法上「消費貸借」に位置付けられます。

金銭債務の特質

ローンは正に金銭債務であり、民法では、金銭債務については次のような特例を設けています。

履行不能という概念がない

金銭債務については、民法でいう「履行不能」と言う概念がないと宅建などの民法学習者は記憶にあるかと思います。

モノはこの世の中から無くなりますが、おカネはこの世の中からは無くなりません。

従って、「手元にカネがないので債務が履行できない」というのは、民法でいう「履行不能」でなく、単に「おカネを支払うことができない」と言う意味で常に「履行遅滞」になります。

債務者が履行遅滞に陥り、債務者に帰責事由があると債務不履行となります。

債務者の帰責事由は問わない

民法上、債務不履行の場合においては要件として「債務者の帰責事由」が必要とされるのが原則です。

しかし、金銭債務においては、債務者に帰責事由がなくとも、債務不履行になるという特則が設けられています。

民法419条3項では「不可抗力をもって抗弁することができない」と規定されています。

つまり、モノと違って、カネは「電車が止まったので支払いできない」などの言い逃れができないということになります。

期限の利益とは

そもそも債務者から見れば、ローンとは「元金を後払いする経済的メリット」と言えます。

例えば、不動産をフルローンで購入後において、1年後に全額支払えと言われても支払えないように、通常は元金の返済を繰り延べしていく約定が金消契約で設定されます。

このローン返済を、一括返済でなく繰延して返済していいという返済期限について債務者は「利益」を享受していると言えます。

このローン返済を一括して返済しなくていいことは、法律上「期限の利益」と呼ばれています。

しかし、この「期限の利益」は、債務者がきちんと契約通りの期日のローンを支払ってくれれば享受できるという条件付きの利益です。

つまり、ローン返済が滞ると期限の利益を失い一括返済を迫られます。
 
当然、高額の残債を返済することができない場合においては、担保となる不動産を売却することによって借入金を返済する必要に迫られることになります。

これを「期限の利益の喪失」と言います。

金消契約には、期限の利益の喪失事由が事細かに記載されることになります。

次のような条項ですね。

第〇条(期限の利益の喪失)
乙について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、乙は甲から通知催告等がなくても甲に対する一切の債務について当然期限の利益を失い、直ちに債務を弁済しなければならない。
(1)甲の請求にも関わらず乙が債務の一部でも履行を遅滞したとき
(2)支払いの停止または破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算開始の申立があったとき
(3)手形交換所の取引停止処分を受けたとき
(4)仮差押、差押または滞納処分を受けたとき
(5)監督官庁より営業許可取消し、停止その他行政処分を受けたとき
(6)乙が担保に供している不動産を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
(7)乙が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
(8)前各号のほか甲に債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき

期限の利益の放棄

以上の期限の利益は、ローンの借入人(債務者)に認められた権利なので、この権利を債務者側から放棄することも可能です。

これを「期限の利益の放棄」といいます。

よく住宅ローンなどで「繰り上げ返済」を行いますね。

繰り上げ返済とは、返済期限が先であるにも関わらず、あえて先払いするという債務者側の意思表示と言えます。

つまり、繰り上げ返済とは、債務者が「期限の利益を放棄する」行為なのです。

銀行側も契約事務や資金運用上の理由から、繰り上げ返済に対しては通常条件を設定します。

例えば、繰り上げ返済ができる時期又は額、繰り上げ返済手数料などを事前に金消契約で取り決めておくのが一般的です。
 

ノンリコースローンの金消契約の特徴

「不動産ファイナンス入門その1 【コーポレートファイナンスとアセットファイナンス】」にて、アセットファインアンスの代表例がノンリコースローンであることを解説いたしました。

不動産ファイナンス入門その1 【コーポレートファイナンスとアセットファイナンス】

ノンリコースローンの定義は以下の通りです。

ノンリコースローンの定義
日本語訳としては「非遡及型融資」。伝統的な企業融資(コーポレートローン)に対比される概念。ローンがデフォルトした際に債権者(レンダー)は、担保対象となる資産(不動産)からのみ資金回収ができる特約が付いたローン。不動産証券化にスキームにおけるアセット・ファイナンスで提供されるローンの殆どはこのノンリコースローンとなる。

以上の定義のように、ノンリコースローンもコーポレートローンと同じく、金銭消費貸借契約となりますが、特約にて責任財産を不動産とその不動産から生じるキャッシュフローに限定するという趣旨の「責任財産限定特約」を付すという違いがあります。

ここでいう責任財産の定義は次の通りです。

責任財産の定義
債権者は、債務者が金銭債務の履行をしない場合、勝訴判決などの債務名義(強制執行の根拠となる文書)を得た上、債務者の財産に対して強制執行をして、債権回収をすることができる。この債務者の財産を責任財産という。

不動産ノンリコースローンの契約では、この責任財産が不動産に特定されるという特約を金消契約に付し、債務者のその他の財産に対しては、強制執行ができない旨を約定することになります。

このようにノンリコースローンの契約書では、責任財産が不動産に限定され、他の資産に遡求できないというリスクを債権者側が負うことから、一般の金消契約より不動産キャッシュフローを細かく債権者が監督し、支払いルールを詳細に設定することになります。

従って、ノンリコースローンの契約は一般の金消契約より膨大な量の条項設定が行われ、ページ数も半端ないほど多くなります。

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