Acquisition
アクイジション。物件取得のこと。追加投資型のファンドでは、不動産運用能力もさることながら、アクイジション能力の高さがAM会社の能力の一部となる。投資家からの評価のうち、このアクイジション能力は非常に重視される傾向がある。REITの場合は、スポンサーからの取得もアクイジション能力の一つであり、スポンサーからの物件パイプラインの厚さがAM会社の評価を左右する。
Arranger
アレンジャー。不動産証券化スキーム全体をアレンジメントする者。不動産ファンドの立ち上げからスキームの構築、資金調達の全体のアレンジを行う。通常、不動産ファンド業界ではAM会社が行うことになるが、大型不動産の証券化商品のアレンジメントについては、証券会社や投資銀行が担うケースもあり、
CA Confidential Agreement
秘密保持契約。大型の不動産売買の現場では、情報開示を慎重に行う傾向が強く、物件概要書にて大まかな不動産情報を開示された後に、詳細な物件資料の開示を受けるというステップを踏む。この際に必要なのがCAの差し入れ。
Closing
クロージング。案件の完了。不動産証券化業務では、AM会社の物件取得担当者が中心的役割を果たし、物件の売買を成立させていく。最終的な不動産の登記移転と資金決済を行うことになる。これをクロージング日に一気に行うのが通常である。ただし、売主買主でクロージングに間に合わない瑕疵の治癒(例:隣地との境界確定)などの必要性が生じた際は、これを案件のクロージング後に処理することもある。これをPost-Closing(ポスクロ)という。
Comps
コンプス。Comparablesという英語から派生した用語であり、いわば取引事例のこと。収益物件の価格査定の場合、CapRate、賃料データ等の取引・成約事例を収集して対象不動産の収益価格を査定する必要があり。AM業界では、JAPAN-REIT.COMが提供するJ-REITの取引データは業界標準になっている。
Core Fund
コアファンド。最も安定した不動産の運用を行うファンド。例えば、Aクラス、オフィスビル賃貸収益を
一般的にリスクも小さいがリターンも低いという特徴あり。
Core+ Fund
コアプラスファンド。コアファンドより一歩踏み込んだリスクを取ることを運用方針として掲げているファンド。期中のインカムゲイン以外に最終の出口(転売)時において、比較的マイルドな超過リターンを享受することを目標としているケースが多い。例えば、物件の共用部のリニューアル工事、賃貸戦略の一部見直しにより運用期間中のNOIを向上させ、その結果、最終の売却価格である収益価格を高めるという運用方針を取っているファンドのイメージ。
DD Due Diligence
デューデリジェンス。元々は、企業買収(M&A)分野の専門用語であり、売買の前提として、買主が行う各種調査のこと。不動産売買の前提として買主は、土地、建物に瑕疵がないか(物件DD)、賃貸借契約等に問題がないか(法務DD)を行います。特に、不動産証券化スキームではアレンジャーたるAM会社が投資家からの受託責任を全うする必要があり、各種DDを徹底的に行うことにより善管注意義務を果たすことになる。
Documentation
ドキュメンテーション。略称、ドキュメン。不動産証券化関連業務には当事者が複数関与し膨大な量の契約書や覚書が締結される。例えば、売買契約、信託契約、管理契約、マスターリース契約、ローン契約、匿名組合出資契約などの契約をコントローラーとなるAM会社の担当者が外部専門家と連携しながら取引(ディール)を進めていく。AM担当者には、相当の法的知識、物的知識のみならず、案件クロージング前には、徹夜を厭わないタフネスさが必要とされる。
End-Tenant
エンドテナント。最終的に不動産を使用し(転貸)賃料を支払う賃借人のこと。不動産証券化スキームにおいては、不動産の原所有者(売主)が原賃借人との賃貸借契約を維持しつつ、不動産をSPC等に売却後においても、新所有者と建物一括の賃貸借契約(マスターリース)を締結する所謂セル&リースバック形式をとることが多い。このような売買形式を採用するメリットは様々あり、現状の賃貸借契約関係を維持する機能、SPC(又は信託銀行)が直接エンドテナントとの賃貸借契約の賃貸人にならないため賃貸管理実務上有益であること等が挙げられる。このようにマスターリース方式が採用される場合の民法、借地借家法上の賃貸借関係は、新所有者(SPC又は信託)が賃貸人、マスターリース会社が賃借人兼転貸人、エンドテナントが転借人の関係に立つ。
なお、2020年4月施行の民法改正によって、このスキームが公式に民法で認められている。
Exposure
エクスポ―ジャー。投資対象の不動産、投資ファンドがリスクにどの程度さらされているかを表す。例えば、「リスクエクスポージャーが高い」とは、マーケットの変動等の外部要因により資産価格が変動するリスクが高いことを意味する。リスクエクスポージャーを極小化するのがファンドマネージャーの腕の見せ所である。
Forward Commitment
フォーワードコミットメント。未竣工物件などの完成を停止条件として、現在時点にて価格等の大まかな条件を約束(コミット)すること。将来時点における売買を約束するものであることから、その間の価格変動等のリスクを差し入れ者が背負うことになる。REITでは、フォーワードコミットメントをそもそも禁止されているケースもあり、事実上のフォーワードコミットメントを行う場合には法的義務を負わないようにするなどの手当をしながら、物件取得活動を行うケースも多い。
GK-TK
合同会社、匿名組合の頭文字を取ったもの。不動産証券化スキームの一つ。会社法の改正により合同会社が制度として導入されることとなり、簡便性、遵法性、税の導管性要件等を満たすGK-TK方式が不動産証券化スキームで多用されるようになった。GK-TKスキームでは、不動産特定事業法の制約から現物不動産の運用ができないということがあり、信託受益権に化体された不動産を取り扱う必要がある。
IPO Initial Public Offering
新規上場。元々は証券用語であるが、J-REITの登場によって、新規にJ-REITを立ち上げ証券取引所で上場させる場合もIPOと言われるようになった。IPOに対して、運用期間中の増資は俗称PO(Public Offering)と呼ばれている。なお、私募リートの増資は正式には公開株でないことから、パブリックなものでないが、単に増資をPOということが慣行となっている。
Launch
ローンチ。案件の立ち上げの意味。例えば、ある投資ファンドの運用を開始したり、当該投資ファンドが物件を取得して運用を開始したりする際に「ローンチする」と言う表現で使用する。
ML Master Lease
マスターリース。不動産所有者から一括して不動産を借り上げ、転貸事業を行う賃借人。証券化スキームでは多用される方式。現所有者(売主)が賃貸借契約を複数のテナントと契約している場合においては、1件1件のテナント契約を新所有者に移管することは煩雑であることもあり、売買後においても現所有者と新所有者の間でセル&リースバックを行うことにより現賃借人(新転借人)との関係を維持しようとする実務の要請がある。また、信託スキームの場合、信託銀行は単に所有の箱を提供するだけであり、信託銀行の受託に当たってML方式を採用することが条件となるケースも多い。
なお、サブリースと同じ意味合いであるが、サブリースと言う用語は、何故か証券化業界で使われることは少なく、現物不動産の場合に使われることが多い傾向がある。
Master Lessee
マスターレッシ―。マスターリース契約における賃借人。マスターリース契約では、オーナーから対象不動産を一括してマスターレッシ―に賃貸することから、マスターレッシーの立場は賃借人兼転貸人となる。
Master Lesser
マスターレッサー。マスターリース契約における賃貸人。不動産所有者、オーナーのこと。
Operator
オペレーター。物件の運用者。例えば、投資対象がホテルの場合、不動産保有主体のSPCは、直接ホテルの運用能力を持っていないことからホテル運営業者に一括して業務委託を行うことになる。この業務受託者をオペレーターという。オペレーターに運営業務受託だけを委託業務委託方式と、オペレーターが不動産を一括賃借する賃貸借方式の2通りがある。
Opportunity Fund
オポファンド。機会を求めるファンドと言う意味で、最もアグレッシブなリスクを取りに行くファンド。その他コアファンド、コアプラスファンド、バリューアッドとの比較では、最も高いリスクとリターンを目指す運用スタイルを行うファンドである。エクイティIRRは最低でも10%以上、高いものでは20%~30%を目指すファンドである。物件を単に所有するだけでなく、不動産の開発まで手掛けることが多い。欧米の外資系に多いが、日本のデべも広義のオポ系投資家と言える。
PSA Purchase and Sales Agreement
売買契約書のこと。
Sourcing
ソーシング。元々は「調達」と言う意味が転じてAM業界における物件取得活動を指すようになった。ソーシング担当者は、いわばAM会社の営業マンであり、幅広い人脈などを有する不動産仲介業の出身者が担当するケースが多い。アクイジション(Acquisition)活動ともいう。
SPC Special Purpose Company
特別目的会社。証券化スキームの場合、原資産保有者(オリジネーター)からの倒産隔離の必要性、税の導管体要件を満たす必要性から、通常の株式会社による不動産所有でなく、特別目的会社に資産を保有させるスキームを構築するのが一般的である。SPCの例としては、GK-TKスキームによる合同会社、資産流動化法に基づく特定目的会社(TMK)などの会社形式のものが代表的。似た言葉としてSPV (Special Purpose Vehicle)があるが、SPCは会社形式であるが、SPVには投資組合や投資法人法の投資法人などを含むことから更に広義の概念となる。
なお、資産流動化法(SPC法)上のSPCは、特定目的会社(TMK)と呼ばれていることに注意が必要。
SPV Special Purpose Vehicle
投資ヴィークル。株式会社(KK)、合同会社(GK)、特定目的会社(TMK)、投資法人(REIT)などの投資ヴィークルの総称をSPVと呼ぶ。SPCは会社形式のSPVであり、SPVの概念としては、投資組合などの会社形式以外のものを含むものである。
TMK
資産流動化法(SPC法)による「特定目的会社」の頭文字を取ってTMKという。不動産証券化スキームにおいて、現物不動産の証券化、流動化においては、宅地建物取引業法の規制を受けるため、合同会社スキームは使えないため消去法的選択として、TMKが採用されるケースが多い。
ただし、資産流動化計画を各地域の財務局に届ける必要があり煩雑な実務が必要とされ敬遠される側面もある。
SPC法上のSPCがTMKで、SPC法上でないSPCを単にSPCということに言葉のややこしさがある。
Value-Added Fund
バリューアッドファンド。一般的に投資ファンドの運用方針として、リスクの序列によりコア、コアプラス、バリューアッド、オポの順番にリスクとリターンが増大していく構造にあり、そのような意味において、バリューアッドファンドは、コアとオポの中間的リスクを取って超過リターンの享受を目指すファンドと言える。このファンドの特徴としては、インカムゲインとキャピタルゲインのバランスを取りながら最終的なIRRを向上させるという特色を持っており、物件のリニューアルによる賃料単価の上昇等を積極的に行う運用方針を掲げるファンドが多い。
Waterfall
ウォーターフォール。不動産から生じるCFは、優先弁済権を持つレンダーへの元金返済に充てられ、更に、物件の費用を控除した後にエクイティ投資家の配当に充てられる。このようにおカネの流れがあたかも、上から落ちてくる水の流れのように分配されていくことから、ファンド内でのCFの流れをウォーターフォールと呼ばれている。
Warehousing
ウェアハウジング。元々は物流用語であり、倉庫に入れて保管するという意味であり、派生して不動産ファンドにおける物件取得方法の一つとして認識されている。不動産証券化業界における、ウェアハウジングとは、例えば、REITが決算時(通常年2回)に合わせた増資資金で物件を取得する場合、売主と最終的な買主であるREITの間で物件売却の希望時期がずれることがあり得る。この際、ウェアハウジング会社が、一旦物件を仮に取得して、それを最終的にREITに転売して時間稼ぎを行うケースがよく見られる。ウェアハウジング会社としては、不動産会社やリース会社が担うケースが多い。エアハウジングのもう一つの機能としては、物件の建物・設備の償却を進めて、簿価を落としてREITに組み込むという意義もある。